『わくらば追慕抄』 朱川 湊人
前作の「わくらば日記」を読んでから10年以上経ってしまいました。昭和30年代を舞台にしたこの物語は、わたしにとっての一番古い記憶に重なるところがあって、懐かしさが溢れてきます。
人や物の「記憶」を読み取れるという不思議な力をもった姉の鈴音と、お転婆で姉想いの妹ワッコ。固い絆で結ばれた二人の前に現れた謎の女は、鈴音と同じ力を悪用して他人の過去を暴き立てていた。女の名は御堂吹雪-その冷たい怒りと憎しみに満ちたまなざしが鈴音に向けられて…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさと生きる哀しみをノスタルジックに描く、昭和事件簿「わくらば」シリーズ第2弾。(書籍紹介文より)
携帯電話どころか、家の電話すらもない家がかなりあって、浅草や渋谷は滅多に行けない繁華街で、女の子だけでの外出は暗くなる前に帰らなければならない。まだ、TVよりも映画の影響力の方が大きくて、映画スターは雲の上の人、そんな時代のお話です。
お姉さまの不思議な力で解決する事件もあれば、知らないままの方が良かったかもしれない事実もあったりして、人間の巻き起こすいろんな事件は今も昔も変わりません。でも、この時代の方が、自分の運命に対して耐える力が強かったのかなという感じもします。
昭和は遠くになりにけり。たぶん、次の作品が出るころには平成も終わってしまいます。
1373冊目(今年28冊目)☆☆☆☆☆
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