ブログ内検索


  • ダメでもいいからやれ。
    体験もしないでお前ら、
    すぐに「ダメだ」って言うのは、
    学校で聞いただけの話だろう。
    やってみもせんで何を言っとるか
    (by 本田宗一郎)

読書Love!

  • 本が好き!
  • NetGalleyJP
    プロフェッショナルな読者
    グッドレビュアー 100作品のレビュー 80%

« 『女装と日本人』 三橋順子 | トップページ | 『昨夜のカレー、明日のパン』 木皿泉 »

『スティグマータ』 近藤史恵

スティグマータ

近藤 史恵

 サクリファイス、エデン、サヴァイヴ、キアズマ、そしてスティグマータは、自転車ロードレースを描いた小説の5作目です。

 スティグマータという言葉を調べてみると、「聖痕」という意味があるのです。かつて名選手であったのに、ドーピング問題でこれまでの戦績をはく奪された選手が、今回のツール・ド・フランスに戻ってくるというところから物語が始まります。この選手が復活するのは何を求めてなのか?かつての栄光を取り戻したいのか?それとも、何年かのブランクを乗り越えて頑張って戻ってきたのだという「痕」を残したいというだけなのか?そんなことで付けられたタイトルなのでしょうか。

 チカは、ヨーロッパに渡ってから何年かが過ぎ30歳になっています。ある程度の実績を重ね、ロードレース選手としてみんなに認められてきてはいるけれど、あと何年走り続けることができるのか?今年はこのチームで走っているけれど、来年はどこかと契約できるのか?そんな不安も抱えつつ走り続けています。

 よっぽどのことがなければ、毎日練習を続け、体重を増やさないように食事に気を付け、日本に帰ることもほとんどなく、選手として走れる間はこの生活をずっと続けていくのだという信念を持っているチカ。

 今はフランスに拠点を置いているけれど、来年はどこかへ移動するのかもしれないし、言葉はかなり大丈夫になってきたけれど、それでも理解しきれないことはまだまだあるし、ロードレースの選手は、いろんな意味でタフでなければ生きていけません。

 ロードレースは、実に不思議な世界です。今は同僚でも来年はライバルチームへ行ってしまうかもしれないし、今は敵でも来年は同僚かもしれない。落車してケガしてしまえば休まざるを得ないし、運が悪ければ死んでしまうことだってあって、何が起きるか分からないからこそ、運命共同体であるという意識を持って生きているのです。

 チカはそんな世界に生きています。来年もツール・ド・フランスに出場できますように!

1375冊目(今年30冊目)☆☆☆☆☆

« 『女装と日本人』 三橋順子 | トップページ | 『昨夜のカレー、明日のパン』 木皿泉 »

日本の作家 か行」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『スティグマータ』 近藤史恵:

« 『女装と日本人』 三橋順子 | トップページ | 『昨夜のカレー、明日のパン』 木皿泉 »