『誰がアパレルを殺すのか』 杉原淳一
かつて、アパレル業界に居たことがあるわたしにとって、アパレルというのは実に不思議な世界です。「センス」とか「お洒落」とかってものを売っている業界のはずなのに、その実は「体育会」で、土日はもちろん正月だって働いていいるのに薄給を強いられる。だから、いい人材は育たない。悪いサイクルが綿々と続いているのです。
そして、流行という名のもとに同じような服ばかりが生産され、おまけに生産量は希望的観測だけで決められ、大量に発生する在庫はバッタ屋さんへ流れ、価格は壊滅的に破壊される。つまりアパレルは自分で自分の首を絞め続けてきたのです。
なぜアパレルにお金が落ちないかと考えた時、収入が少なくなったからという言い訳はできないのです。スタバであれだけ高い飲み物を買い、スマホにあれだけのお金を使っていたら、他に回すお金はおのずと減ります。限りある予算の中で、お金を使う優先順位が変わってしまっているのです。
誰もが欲しがるものなどないのに、大量に売れる何かを求めてしまったのがアパレル業界の敗因の一つかもしれません。特定の人の特定な用途のため「カスタマイズ」するということには、人は意外とお金を使ってくれます。この世に一つしかないものを作るという発想を持つことこそが、アパレル起死回生のポイントではないでしょうか。
アパレルが本当に夢のある仕事に戻れたらいいのです。大きな会社は数社あればいいのです。個人あるいは小企業がカスタマイズを上手くしていくことができれば、アパレルをもっと楽しいものに変えることができると信じたいのです。
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