『考える耳 -記憶の場、批評の眼-』 渡辺 裕
音楽をどう演奏するのかは基本的に自由です。オリジナルの印象が強すぎて、他の表現をしたときに、なんか違うよねという気持ちになることが結構あります。
時として、カバー曲の方を先に聞いてしまっている場合があります。この本で紹介されていたのは、グレン・グールドが演奏したバッハの曲を子供のころによく聞いていたという人が、他の人が演奏するバッハの曲を聞くと、何か物足りないという気持ちになってしまうというのです。
音楽は時と共に変わっていきます。演奏者の解釈の差もあれば、世間のリズムが変わっていくからということもあります。聞く方の環境もあるし、ライブで聞くのか、録音されたものを聞くのかでも印象はかなり変わっていくのです。
どれが正統派なのだという論争がよくありますけど、それはどこまで正しいのか、誰にも分からないものであるような気がします。
音楽は様々なことを考えさせてくれます。音楽の雰囲気で厳粛な気持ちになったり、楽しい気持ちになったりします。その音楽を最初に聞いた時のことを思い出したりすることもあります。初恋の人が好きだった曲のことや、旅先で聞いた曲のこと、大好きな映画のこと、いろんな思いが脳裏に浮かぶのです。
音楽を聞くだけでなく、それにまつわる事柄を考え、文章としてまとめるというのも、なかなか面白いことだなと思わせてくれる本でした。
1397冊目(今年52冊目)☆☆☆☆☆
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