『よるの美容院』 市川朔久子
ナオコ先生は「ひるま美容院」という、昔ながらの美容院を経営しています。まゆ子ちゃんは、ここの手伝いをしながら暮らしています。
ある事件があって、まゆ子ちゃんは心に傷を負ってしまいました。そのせいで言葉が出なくなってしまったのです。家では声が出るけれど、外に行くと全く声が出なくなるという状態で、最初は学校へも通っていたのですが、しゃべれないのはとても不自由な状態で、ますますストレスが増すばかり。心を静めることが一番大事だということから、ナオコ先生の所へ行くことになりました。
自分の中にあるストレスの元、それが分かっているようで分かっていないから人は苦しむのです。そんな時に、あれがいい、これがいいと他人はいろんなことを言ってきます。でも、それってほとんどの場合「大きなお世話」なんですよね。
どんな状態であろうと、そのまま受け止めてくれる人の存在が一番ありがたいんです。どんな言葉よりも、まゆ子ちゃんの髪の毛をシャンプーしてくれるナオコ先生の指先が、まゆ子ちゃんを癒してくれるのです。
まゆ子ちゃんのような気持ちを抱えたまま生きている人ってたくさんいるはずです。そんな人を助けるというよりも、そっと寄り添うという人の存在こそが大事なんだなと思いました。
1404冊目(今年62冊目)☆☆☆☆☆
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