『週末は家族』 桂望実
大輔と瑞穂は仲の良い友達だけど、男と女という関係ではありません。でも、いろいろと考えてみると2人で暮らした方が都合が良いことが多いので結婚しています。そんな2人が、児童養護施設で暮らすひなたとの週末里親になったのです。
週末だけ3人で家族として生活してみようというのは表向きで、本当は「ひなた」という演技力がある子供に大輔がとても興味を持ってしまったのです。彼女がいれば親子役として仕事ができそうだと考えたのです。
親子の振りをして、派遣の仕事をするうちに、不思議なチームワークができてきました。ひなたは養護施設で暮らしていますけど、母親は離れたところに住んでいます。母親から必要とされていない、母親の愛がないと感じている彼女は、この週末だけの親子関係の方に、より暖かいものを感じるようになっていきます。
施設の人は「やっぱり親子なんだから、いつかはお母さんと暮らしたいでしょ」と言うけれど、「あの人と暮らすのは無理だよ。施設の方がいいよ。」というのが、ひなたの本音なんです。でも施設の人は、それはただの強がりだと勘違いしているのです。ひなたの母親には愛がないのだということを理解してくれないのです。
こういう常識論に流されて、本人が望んでいない家族へ引き戻されるケースって多いのでしょうね。いくら血がつながっていたって、ダメなものはダメなんだってこと何故分かってくれないのかしら?その無理強いがゆえにDVで傷ついたり、自殺してしまったりする子がいるってことを、どうして分かってくれないのかしら?
この物語では、母親の化けの皮が剥がれちゃったから良かったけど、実際には悲しい結末になってしまうことも多いのだろうなぁ。そんなことを考えさせられた本でした。
1420冊目(今年78冊目)☆☆☆☆☆
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