『無菌室ふたりぽっち』 今田俊
今田さんは、最初は単なる口内炎だと思っていました。そのうちに歯茎が痛くなり、身体がだるくなってきました。でも大したことはないと思っていました。立ちくらみするようになり、医者で血液検査しましょうかと言われ、検査した結果「急性骨髄性白血病」だと判明し、即日入院することになり闘病生活が始まりました。
抗ガン剤での治療が始まり、いろいろな痛みが彼を襲ってきます。身重の奥さんはそんな今田さんをいろんな意味で助けてくれました。自分が死んでしまったら、家族はどうなるんだろう?これから生まれてくる子供が自分のことを分かってくれるようになるまで生きられるのだろうか?いろんな悩みも生まれてきます。
同時期に、同じ会社の別部署のエンドーくんも白血病で入院していることを知ります。彼のことも後に取材して、この本に書かれています。それぞれの闘病の様子が記録されているのです。
白血病がいったん収まり社会復帰したけれど、2年後に再発し再入院、今田さんは再び白血病と闘うことになります。
ガンにはいろんな辛さがありますけど、白血病という血液のガンの辛さは、これといった決定的な治療法がないことだと今田さんは語っています。患部を切るということができない白血病の場合、治療方法は投薬か骨髄移植しかないのです。
白血病の発病理由も、はっきりしていないのです。ある日突然、白血病ですと宣告されてしまうのです。同じ治療をして、治る人も治らない人もいるのです。病気になるのも、治るのも、死ぬのも、はっきりいって「運」なのだというのです。
でも、こうやって闘病記を書くことが、これから発病して病気と闘う人の力になるなら、それは大事なことだと思って書いたのだそうです。読んでいて辛くなる部分も、泣きたくなるところもありますが、自分だってこういうことになるのかもしれないのだと思いながら読みました。
白血病で死んだ友人のことを思い出しました。彼女もこういう辛さを抱えてがんばったんだなと思いました。本人もだけど、家族も大変だったろうなと思いました。
ノーベル賞をとった免疫療法が白血病を治す切り札になってくれたら、いいのになと思いました。いつの日か、白血病はみんな治る病気になって欲しいと、心から祈っています。
1425冊目(今年83冊目)☆☆☆☆
« 『しない。』 群ようこ | トップページ | 『大家さんと僕』 矢部太郎 »
「伝記・日記・ノンフィクション」カテゴリの記事
- 『パラリンピックは世界をかえる ルートヴィヒ・グットマンの物語』 ローリー・アレクサンダー(2022.04.29)
- 『魂の退社』 稲垣えみ子(2022.02.27)
- 『ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌』 神山典士(2021.12.30)
- 『日本語とにらめっこ』 モハメド・オマル・アブディン(2021.12.24)
- 『チューリング』 B.ジャック・コープランド(2022.01.11)
「日本の作家 あ行」カテゴリの記事
- 『横浜駅SF 全国版』 柞刈湯葉(2022.05.17)
- 『[ポケット版] すてきなあなたに 03セーヌの影絵』 大橋鎭子(2022.05.16)
- 『マイクロスパイ・アンサンブル』 伊坂幸太郎(2022.05.15)
コメント