『手のひらの音符』 藤岡陽子
自分が「この仕事」と選んで働き続け、一生この仕事でいこうと思っていたのに、突然上司から自分の仕事がなくなると知らされるところから、この物語が始まります。
今の仕事の後片付けをしつつ、次の仕事を探し、何でこんなことになってしまったのだろうと主人公の女性は悩みます。45歳の自分は、この先どうなっていくんだろうと不安な気持ちでいるところに、高校時代の友人から電話が入ります。恩師が重病で入院しているからお見舞いに行かないかと。
子どものころのことを色々と思い出します。貧しいけれど温かい家庭があって、仲の良い友達がいました。いやなクラスメートがいたり、アル中の父親がいたり、楽しいことがあったり、悲しいことがあったりしました。
自分の子供のころを思い出しながら読んでいました。学校のクラスの中にはいろんな子がいました。貧乏な子も、お金持ちな子も、元気な子も、病気の子も、明るい子も、意地悪な子も、いろんな子がいました。
学校を卒業してから何年かして、何十年かして、そんなクラスメートと再会したり、逢えなくなってしまった友達のその後の話を聞いたりすると、本当にいろんなことが起きているのです。
親の会社や店を継いだけど、景気が悪くなって倒産してしまったり。商売を手堅くやっていたり。病気や事故で死んでしまったり。いろんなことが起きているのです。どんな人にもそれぞれの人生があるのです。
限りある命なんだから、自分のやりたいことをやらずに死んだらいけないな。会いたい人には会っておかなければいけないな。行きたいところへは行っておかなければいけないな。
そんな気持ちになる本でした。
1432冊目(今年90冊目)☆☆☆☆☆
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