『向田理髪店』 奥田英朗
北海道の中央部にある小さな町「苫沢町」は過疎化が進行しつつある町です。若者は学校を卒業すると、仕事を求めて札幌などの都会へ行ってしまいます。主人公の向田さんの息子さんは一度は都会へ行ったけれど、理容師の学校へ行ってから町へ戻って家業を継ごうと思っていると言い出したのです。
その気持ちは嬉しいけれど、向田さんと彼の友人たちは、若者がこんな町へ戻ってきてもしょうがないだろうという気持ちも持っているのです。
村興しがなかなかうまくいかなかったり、せっかく町に残ってもお嫁さんが来なかったり、町からやってきた妙齢のスナックのママにドキドキしたり、映画のロケ地になったり、町の出身者が犯罪を起こしてしまったり。
小さな町にも、いろんな事件が起きるのです。その度に「どうしよう?」という話が盛り上がります。役場に文句を言ったり、けんかの仲裁に入ったり、そんなことができるのも小さな町ならではの一体感なのでしょう。
最後の「逃亡者」の一件のように、仲の良い人たちだからこそできる「落としどころ」こそが小さな町の良いところなのだと思うのですが、実際には田舎だと難しいのかなぁ?
この6作品が収められています。
- 向田理髪店
- 祭りのあと
- 中国からの花嫁
- 小さなスナック
- 赤い雪
- 逃亡者
1464冊目(今年2冊目)☆☆☆☆
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