『ウズタマ』 額賀澪
周作は子供のころから父親と二人で暮らしてきました。その父が脳梗塞で倒れ、回復の見込みがない状態になってしまいました。父が倒れる少し前に、自分名義の大金が預けられた預金通帳を手渡されていたのです。そのお金を送金してくれているのが誰なのか父は教えてくれませんでした。
誰もいない実家で写真を探したり、ネットで情報を検索したり、様々な方法で手掛かりを探していたのです。そして、意外な事実を見つけてしまったのです。
自分が小さな子供だった頃、あるいは生まれる前の両親のことって、何も知らないままのことがたくさんあります。親本人から聞くこともあれば、他の人から教えてもらうこともあります。
周作は、父親が隠していた秘密を知るにつれ、いろんなことを考えるようになります。自分のためを思って隠していたのは分かるけど、これをキチンと知ることができないと、自分は先に進めなくなると考えたのです。
自分の母親が何故いないのかを、これまで父親にきちんと聞いてこなかった自分を反省し、父親の苦悩を思い、そして忘れていた人の存在に気が付き、自分自身の未来のことも少しずつ考えるようになっていくのです。
子供には隠しておきたいから黙っていたこと。別に隠す気はなかったけど言ってなかったこと。何かのきっかけがなければ知らずにいたこと。そういうことが誰にもあります。どんなことであろうと、自分に関わることであれば受け止めるしかないのです。
周作は色々悩んだけど、この事実を知ることができてとても幸せだったと思うんです。だって、これは周作を守るための嘘だったのですから。
最後に、タイトルのウズタマって、最初は何だろうって思ったんですけど、大事なキーワードだったんですね。3歳の周作くんにとって、とても大事なものでした。
1481冊目(今年19冊目)☆☆☆☆☆
« 『生きづらいでしたか?』 細川貂々 | トップページ | 『今夜、笑いの数を数えましょう』 いとうせいこう »
「日本の作家 な行」カテゴリの記事
- 『二十四五』 乗代雄介 25-12-3408(2025.01.14)
- 『Buying Some Gloves(手袋を買いに)』 新美南吉 マイケル・ブレーズ 訳 24-355-3381(2024.12.15)
- 『朝読みのライスおばさん』 長江優子 みずうちさとみ 24-336-3362(2024.11.26)
- 『小さな出版社のつづけ方』 永江朗 24-284-3310(2024.10.05)
- 『小さな出版社のつくり方』 永江朗 24-271-3297(2024.09.22)
コメント