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『毒よりもなお』 森晶麿

毒よりもなお

森 晶麿(もり あきまろ)

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 カウンセラーとして働く千尋は、カウンセリングを受けに来た奈央から、ある自殺サイトがあることを知ります。そこの主宰者「首絞めヒロ」が、自分の故郷での知り合いであるヒロアキと同一人物なのではないかという予感がし、彼について調べてみようと思ったのです。

 自分の子供を虐待している親のニュースが連日報道されています。暴力によって体が傷付けられることについて語られることが多いように思います。でも、この小説を読んでいて感じたのは「心への傷」の方が大きいのではないかということです。

 親という絶対的な力に支配され、圧倒され、傷つけられる子供の心。支配されることしか選べなくなったり、自分なんて何の役にも立たないんだと思う自己否定感。逆に暴力で支配することのみが総てだと思うこともあるだろうし。「首絞めヒロ」のようになっていく人もいるかもしれません。

 ヒロアキが登場するときはいつも、すぅっと後ろに現れるというのがとても怖かったです。怖いはずなのに、追いかけ続ける千尋にも何かあるんじゃないか?と思いながら読み続けました。

 ヒロアキが語っていた「殺人犯は快感を得る為に殺人を犯すとは限らない」というところが気になりました。「何かから逃れるため、嫌な何かを忘れるために」なのだとしたら、それは終わることのない感情なのですから。

 実際にあった「自殺サイト」殺人事件をヒントに書かれた作品とのことですが、ラストの展開は意外でした。でも、多重人格とか、現実と虚構の一体化とか、精神の問題には色々なことがありますからね。

 終盤は一気読みしてしまいました。

#毒よりもなお森晶麿 #NetGalleyJP

1510冊目(今年48冊目)☆☆☆☆

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