『プリズム』 百田尚樹
家庭教師として働くことになった聡子は、そのお屋敷で不思議な男性に出会いました。家庭教師をしている子供も、そこの子母親も、その人のことをハッキリとは教えてくれないのです。でも、この屋敷の敷地内に住んでいるのは間違いないようです。
彼と何度も話をするうちに、彼が解離性同一性障害、つまり多重人格であることが分かってくるのです。
有名な「24人のビリー・ミリガン」の話も出てきて、なぜ解離性同一性障害という症状が発生するのか、それをどうやって治療していくのかが語られていきます。
聡子は最初はそんなことを信じていませんでした。でも、彼の複数の人格(現在は6人)と話をすることによって、少しずつ意味が分かってきたのです。そして、その内の1人に好意を持ってしまったのです。
家族などからの虐待を受けた時、そこから逃れるために別の人格を作り精神的に虐待から逃れるということを、人間の脳は行うのだそうです。その結果として、1人の人間の中に複数の人格が定着し、それぞれが独立した人格として行動することになります。それぞれの人格は他の人格には気付きません。それを分からせ、最終的には統合するためには、丁寧なカウンセリングが必要なのです。
でも、そこまで至らない人も沢山います。虐待するような家族が、虐待を受けた人に治療を施そうとすることはまずないからです。
どんな人にも裏と表の顔があります。たいていの場合は自覚していますけど、自覚できない自分がいるとしたら、それはとても怖いことです。誰かが教えてくれなかったら、知らない自分が何かをしでかしてることに気付けないのです。
虐待という暴力が、肉体的にも精神的にも様々な問題を起こすのだと思うと、本当にやるせないのです。
1514冊目(今年52冊目)
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