『銀河鉄道の父』 門井慶喜
宮沢賢治の生家は質屋さんでした。祖父が作った質屋を継ぎ、ゆくゆくは長男の賢治に後を継がせようと考えていた父、政次郎でした。自分は「質屋には学問はいらない」という父の方針で小学校しか出ていませんでしたが、成績優秀な賢治を上の学校へ進ませることにしたのです。
しかし賢治は家業を継いでくれるような人ではありませんでした。鉱物に興味を持ち、宗教に興味を持ち、最終的には文章を書くこととなり、結局家業を継ぐことはなかったのです。
当時の父親としては、政次郎さんはかなり子供のことを優先して考える人だったのですね。一応小言は言うけれど、結局は子供の進みたい道へ行かせてやろうとする優しい人だったのだなと思います。
子供時代に賢治が赤痢で入院した時、父親が看病するなんて当時では到底考えられないようなことをする人でもあった政次郎さん。若くして亡くなった賢治が数多くの作品を残せたのも、この父親に守られていたからこそなのですね。
机に向かうことができない賢治が「もう書けません」と弱音を吐いた時、書きたいと思うなら寝ながらでも書けるのだと叱咤した政次郎さん。そのおかげで「銀河鉄道の夜」が生まれたのだというエピソードから、深い親子の愛を感じます。
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