『水辺のブッダ』 ドリアン助川
望太はかつて犯した罪に押しつぶされ、多摩川の川辺に住むホームレスとなっていました。彼には別れてしまった妻と娘がいて、娘を悲しい目に合わせてしまったことをずっと悔いていました。
別れた妻は再婚し、娘はその家庭の中で浮いた存在になっていました。そして、自分の本当の父は死んだのだと教えられていたのです。でも、あるきっかけで実父が生きているということを知りました。
家族を亡くした父と娘はどちらも、心に虚ろな空白を持ったまま毎日を過ごしていました。
ホームレスの人たちは、みんな過去には普通の暮らしをしていた人達です。仕事が上手くいかなくなったり、家族が亡くなってしまったり、普通の社会の中で生きていくのが息苦しくなってしまった人ばかりです。
自由だけれど何の保証もないんです。寒さや飢えや病気、彼らに危害を加えようとする人、そして台風や地震から、自分の力で逃れなければならないんです。それでも、その生活が心地よいから、ホームレス生活を続けています。
これもまた日本という国の縮図なのだなと思うことばかり、誰にも言えない苦しみを抱いて生きている人がたくさんいるのだなと思うと切なくなります。心の内を少しでも話せる相手、そんな人がいるだけでも人間はなんとか生きていけるんだなと思うのでした。
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