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『線は、僕を描く』 砥上裕將

線は、僕を描く

砥上裕將(とがみ ひろまさ)

NetGalleyJP

2020年本屋大賞 第3位

第59回(2019年)メフィスト賞 受賞

 突然の事故で両親を失くしてしまった青山くんは、何をする気力も失っていました。叔父夫婦のおかげで何とか大学へ進むことはできたけれど、これといった楽しみもなく淡々と日々を過ごしていたのです。

 そんな彼が仕方なくやることになったバイトの現場で目にした水墨画に心を惹かれたのです。紙の上に墨の濃淡だけで表現した絵なのに、なぜか色が見えてくる、そんな不思議な気持ちになったのです。

 水墨画の大家「篠田湖山」先生に何故か気に入られてしまい、内弟子にならないかと誘われたのです。絵なんて描いたこともないしと抵抗したのですが、技術は練習すれば身につく、しかし君のような目を持った人はなかなかいないのだ、というのです。

 ちょっと悩んだけれど、青山くんは湖山先生のことをとてもステキな人だと思えたので、内弟子になったのでした。

 水墨画は墨をするところから始まります。最初は墨なんて誰がどうすっても同じだなんて思っていた青山くんでしたが、墨のすり上がりにも差が出ること、それは技術というよりも気持ちのありようが出るのだと知って、驚いてしまうのです。

 水墨画は筆で線を引くことが基本なので、その練習をしてみると、先生のように一気に線を引くことの難しさが分かってきます。姉弟子の千瑛さんに「線を引くには勇気がいる」と教わり、その言葉を忘れないように練習に明け暮れていったのです。

 水墨画に出会ったことで、青山くんは心を整えることができていったのですね。打ち込むことができるものに出会えたという喜びが、彼を前向きな気持ちにしてくれたのでしょう。

 心を込めて線を描き続けることで、自分というものが明らかになっていく、そんな気持ちを表すタイトルだったのですね。

 静かな、でも熱い心が伝わってくる作品でした。

#線は僕を描く #NetGalleyJP

1523冊目(今年61冊目)

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