『絲的ココロエ』 絲山秋子
絲山さんは30代で双極性障害を発症し、いろいろな面で悩んでこられました。治療に専念するために退社し、それをきっかけに小説家になられたのです。
「うつ」と「躁」という2つの状態を行き来するのが、この病気の特徴なのですが、意外と分かってもらえないのが「躁」の方が危険だという点なのだそうです。傍目には「躁」の方が元気そうに見えますけど、実際にはとんでもない行動に出てしまうことが多いのだそうです。逆に「うつ」の方が行動力が無くなるのでかえって安全というのは、当事者でないと分からないことですね。
家族でさえも躁うつ病に関する一般的な書籍を読んではくれなかったし、今でも理解はしていないようだ。(本文より)
これは、悲しいけどほとんどの患者さんにとっての「あるある」なんです。内科的、外科的な症状であれば色々と勉強してくれるけれど、精神の病となると急に理解度が減るというか、分かろうとしない、というのは何故なんでしょう?
サブタイトルにもなってますけど「気の持ちよう」っていう程度の認識しかない人が多いのかな?ちゃんとした医者に診てもらい、ちゃんと投薬をしたりカウンセリングを受けたりするということで治療できる病気であるという認識が一般の人たちにないのでしょうね。
「虫歯一本すら自分では治せない」のと同じなのに、という言葉が心に残りました。
絲山さんが、同じ症状の知人に「ある医者にかかって、その人じゃダメだと思ったら違う医者に変えていいんだよ」とアドバイスしたというのが、とても印象に残りました。医者の出来不出来もあるし、患者と医者の相性というのもあるんだから、自分にとっていい医者に巡り合うまでいろいろトライした方がいいんだよっていうのは、とてもいいアドバイスだと思うんです。
「ほかの人に迷惑がかかる」という思い込み
こんなこと言っちゃいけないとか、こんなことやっちゃいけないとか、ビクビクしながら生きている人がどうしてこんなに多いんでしょう。
これは「双極性障害」の人だけではなく、ほとんどの日本人がかかっている病ですね。どうしてそんなに「迷惑かけちゃいけない」に固執するんでしょうね?意外とほかの人は何とも思ってないことが多いのにね。
絲山さんの本を読んでいると、どこかしら自分にも共通する悩みを見出してしまい「そうだよね」と思うことが多いのです。そして、私だけじゃなかったんだと、ホッとする気持ちになるのです。
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