『介護に学ぶシニアのおもてなしマーケティング』 砂 亮介
「シニア」とはどんな人たちなのでしょうか?
歳をとれば、様々な機能が衰えてきます。老眼になったり、耳が遠くなったり、疲れやすくなったり、腰が曲がったり、そういう分かりやすい変化だけでなく、意外なところにシニアならではの困ることが発生しているのです。
たとえば、指先の感覚が鈍くなるので小銭をつまむのが難しくなります。財布の中の小銭の種類を見分けるのも難しくなります。ですから、なるべくお札で払おうとした結果、小銭を大量に家にしまい込んでしまったりするんです。
何かをできないということを恥ずかしく思うので、そういうことがないようにと「必要以上にカッコつけてしまう」というのもあります。分からない言葉や事柄に対して「それは何?」と質問しないで分かったふりをしたり、聞こえないふりをしたりしてしまいます。後になって、そんなはずじゃなかったということになります。
新しいことに対応できなくなるというのも大きな問題です。できるだけ過去の経験に基づいて行動したいと思う余り、ちょっとしたことが違うだけでも癇癪を起してしまったりするのです。
困ったことばかりと悲観していてもしょうがありません。どうやってシニアの方の希望を聞き取るのか?そこが問題です。
話をしていて、何だか良く分からないなぁというのは、相手が若くてもよくあることです。要は一生懸命聞くことなのだと思います。相手が言っていることを「オウム返し」すること。きちんと相槌を打つこと。分かったと答える(本当は分かっていなくても)こと。この人は話をちゃんと聞いてくれるなと信頼してもらえるようになることが大事なのです。
そして、シニアに対する自分の思い込みを捨てることも大事です。たとえば、シニアは「健康に良い食べ物を選ぶのだろう」というような思い込みをついつい持ってしまいます。現実には「入歯でも食べやすい」「味がしっかりついている」というようなことの方が大事だったりします。
シニアの相手をするのは面倒だなと思ったら、自分も将来シニアになるのだということを想像してみてください。その気持ちを忘れずにいることこそが、シニアの方が暮らしやすい社会を作る基本なのだと思います。
この本は 書評サイト 「本が好き!」 より献本して頂きました。どうもありがとうございました。
1544冊目(今年82冊目)
« 『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』 汐街コナ ゆうきゆう | トップページ | 『タカラモノ』 和田裕美 »
「日本の作家 さ行」カテゴリの記事
- 『曲亭の家』 西條奈加(2021.04.15)
- 『マイノリティデザイン』 澤田智洋(2021.04.03)
- 『桜の森の満開の下』 坂口安吾(2021.03.23)
- 『君たちが忘れてはいけないこと』 佐藤優(2021.02.26)
- 『駆け込み寺の男 玄秀盛』 佐々涼子(2021.01.25)
「本が好き!」カテゴリの記事
- 『死神の日曜日』 伊東良(2020.09.14)
- 『わたしはフリーダ・カーロ 絵でたどるその人生』 マリア・ヘッセ(2020.08.14)
- 『生きてく工夫』 南伸坊(2020.04.16)
- 『おわんわん』 乾栄里子 100%ORANGE(2020.02.14)
- 『どんなことからも立ち直れる人』 加藤諦三(2020.01.17)
« 『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』 汐街コナ ゆうきゆう | トップページ | 『タカラモノ』 和田裕美 »
コメント