『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』 頭木弘樹
あきらめることができる、
というのは、
幸福なことだし、
美徳でさえある。(フォンターネ)
「夢をあきらめない」本ならいくらでもあるのに、「夢をあきらめる」という本がないということから、著者はこの本を作ったのだそうです。実際問題として「夢をあきらめる」ということは実に沢山あるのです。でも、自分があきらめたときのことは分かるけれど、他人があきらめた夢については知ることができないのです。
どうして夢をあきらめてしまったのか?自分のせいなのか?時代のせいなのか?夢をあきらめた後、その人はどう生きていったのか?死んでしまったのか?そういうことを集めて考えることが大事なんじゃないかと著者は考えたのでしょう。
サッカー選手を夢見たけれど、それが叶わなかった青年。必死に働き続けたけれど、女として報われなかった初老の女性。病気で話すことができなくなった青年。などなど、どれもが、もしかしてわたしにも起こったかもしれない「あきらめ」の話なのです。
わたし自身が経験した「あきらめ」とも、どこか繋がるところがあって、悲しさもあるけれど、どこかで「みんな同じなんだよね」という安堵も感じるそんな話が集められています。
こういう本を読むのも人生にとって大事なことだなって思いました。
1554冊目(今年92冊目)
« 『「痴呆老人」は何を見ているか』 大井玄 | トップページ | 『お釈迦さまの脳科学』 苫米地英人 »
「日本の作家 か行」カテゴリの記事
- 『走れ!移動図書館』 鎌倉幸子(2021.03.01)
- 『コルビュジエさんのつくりたかった美術館』 五十川藍子 金子ともこ(2021.02.09)
- 『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』 小島美羽(2021.01.16)
- 『約束の猫』 村上早紀+げみ(2020.11.29)
- 『定価のない本』 門井慶喜(2020.10.20)
コメント