『旧友再会』 重松清
若くもなく、老人でもなく、毎日きちんと働き、親の身体のことを心配し、けれども家族からはさほど大事にされていない。それが典型的な日本の中年男性の姿であるような気がします。この本に登場するのはそういう男性たちです。
中学校の同じクラスや部活だった友達と再開して、「やっぱり友達だもんな」と言われ、「そうだそうだ」と言いながらも、心の奥底で「ちょっと違うな」という違和感を感じる男。若い頃には想像もできなかったような現実にどう立ち向かっていいのか分からず、身動きが取れなくなってしまった男。男とは、何とも不器用な生き物なのだなと感じることばかりです。
親の介護などで実家をリフォームしたり、片付けたりするのは、とても面倒なことだけれど、でも自分に余力があるうちにやっておかなければならないことです。そして、つい考えてしまうのは、いつかくる自分の最後のときのこと。そんなことに頭を悩ます時が来るとは、若い頃には考えもしなかったことです。
「大変だけどね、みんな通る道だから、なんとかなるもんだよ。」登場人物たちに、そう声を掛けたくなるような場面がたくさんありました。
この5編が収められています。
・「あの年の秋」
パンダが日本にやって来たころのお話。恍惚の人という本がベストセラーになっていた。
・「旧友再会」
小中学校の同級生だった男性が、わたしが運転するタクシーに偶然乗り合わせた。
・「ホームにて」
定年退職後は、駅そばで働きたいと父が言った。
・「どしゃぶり」
中学の野球部の仲間が、久し振りに故郷へ戻って来た。母親の介護のためだ。
・「ある帰郷」
離婚して、これから一緒に暮らせなくなる息子と一緒に田舎の実家を訪れた。地元の駅は無くなり、そこにあったツバメの巣も使われなくなっていた。
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