『白昼夢の森の少女』 恒川幸太郎
様々な媒体に掲載した短編10篇が収められた短編集です。
恒川さんの作品にいつも存在する不条理が、ちょっと怖いけれど覗いてみたいという気持ちにさせてくれます。
表題の「白昼夢の森の少女」の、ツタに捕らわれてしまった人たちという設定に、とても驚いてしまいました。ツタを介してネットワークが生まれ、大勢の人たちの心がつながるという不思議な世界。そこに入り込んでいきたいと考える人、その世界を壊そうとする人。どうして人は、他人の世界を放っておいてくれないのでしょうか?
「夕闇地蔵」の主人公は、他の人には見えないものが見えるのです。それは命の存在のようなものなのですが、それについて誰にも説明ができないし、それがどのような役に立つのかを本人も分からないのです。
誰だって囚われてしまっている世界があるし、その人にしか見えないものがあるはずです。それを強く意識するのか、それは普通のことだと考えるのか、それが他人とは大きく違っているものだと考えるのか。
いずれにせよ、世の中に同じ人は2人いないのです。それぞれの世界が他人にとってはとても不思議で不条理なものなのだと、この本を読んでいて強く感じたのでした。
1565冊目(今年103冊目)
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