『ユリゴコロ』 沼田まほかる
一人暮らしをしている父親の家で、ふと見つけてしまったノート。そこには真実とも創作とも判断ができないような物語が書き留められていて、こんな恐ろしいことをする人がいるなんてはずはないのだから、きっと家族の誰かが書いた小説か何かなのだろうと思いたい。
でも、読めば読むほど自分の家族のことであることが分かってきて、子供のころに感じていた母親がすり替えられたらしいという思いも再びよみがえってきて、動揺がどうにも止められない主人公なのです。
自分が周りのことを良く分からない子供のころに、実はこんなことが起きていたのだよとか、お母さんは若いことにこんなだったんだよって、大人になってから知ることがあります。大抵はたわいもないことなんだけど、とんでもないことが起きていたということも結構あるものです。
わたし自身、父や母の若い頃の話を大人になってから知ってビックリしたことがたくさんあります。生まれ育った土地から離れて、今の場所で暮らすようになったのには、そういう意味があったのだと知って愕然とすることもありました。
普通の人として暮らしている人だからといって、ずっと平穏無事に暮らしてきているわけではないのです。それぞれに事件があり、それぞれに他人には言いたくない秘密があるのです。それを胸に秘めたまま死のうと思っているのだけれど、ちょっとしたきっかけで他人に知られてしまうこともあるのです。
生きていくって、楽しいこと、苦しいこと、面白いこと、嫌なこと、いろんなことがまぜこぜになっているのです。他人に知られては困る秘密を誰でも持っているのも、人間の業なのでしょうか。
1576冊目(今年114冊目)
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