『昭和の仕事』 澤宮優
この本の第一章では「高木護」という放浪詩人の職歴を追っています。幼い兄弟を飢えさせないために体の弱い兄は必死に働きます。炭焼き、闇市番人、飴屋、焼き芋屋、など様々な仕事をしていきますが、半人前の仕事しかできない彼は自分がいない方が兄弟の食い扶持が増えると考えて家を出ます。そして石工見習いや、乞食見習い、アベック旅館番頭、ペンキ屋、沖仲仕、などをするのですが、どれも定職とはなっていきません。様々な仕事、どれもがやがて無くなっていく仕事ばかりです。
第二章は「戦後失われた仕事」です。桶屋、藍染め、洗い張り屋、こうもり傘修理業、金魚売り、香具師、井戸掘り師、屋根葺き、産婆、代書屋、チンドン屋、もぎり、など今も残っているけれど、ほとんど絶滅危惧な仕事ばかり。
第三章は「今も生き続ける昭和の仕事師たち」です。昔は街角でよく見かけた「ポン菓子」の機械を作ることに命を懸けた吉村利子社長の生き方には、ただ驚くばかりでした。こういう人たちが昭和という時代を守ってきたのだなと思うのです。
昭和は遠くになりにけり、令和の時代にはどんな仕事が生まれ、無くなっていくのでしょうか。そして、それを記録していく人はいるのでしょうか。
1586冊目(今年124冊目)
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