『夫の後始末』 曽野綾子
ずっと昔、聖路加病院の故・日野原重明先生と対談した帰りの車の中で、当時はまだ素人は知らなかった人間の臨終を楽にする方法を、私は教えて頂いた。やってはいけないことが、三つほどあったように私は記憶した。胃ろう、気管切開、多量の点滴による延命である。(本文より)
ずっとお元気だった夫の三浦さんが、急に転ぶことが増えて、おでこにたんこぶを作ったり、玄関の前で倒れていたりということが何度かあって、足腰や体力の問題が浮き彫りになって来たのだそうです。こういう変化を見逃さないということが、高齢者と暮らす中でとても大事なことなのだと思います。
曽野さんは、できる限り三浦さんを自宅で介護しながら生活しようと考えていました。曽野さんが85歳、三浦さんが90歳の時です。作家という仕事は、夫の介護をしながらするには、なかなか便利な職業だというのです。三浦さんは車椅子でしか移動できない状態になったとはいえ、週に数回は書店へ出かけて買ってきた本を読んだり、新聞を読んだりという生活を楽しんでいたようです。
どちらかが死んだ後のことをお2人は色々と話し合っていらっしゃったのだそうです。お2人はカソリック信者ということもあり、死に対して正面から対峙することを避けていなかったのです。余計な延命措置は止めようということを自分では希望していても、家族へ知らせていなかったために、希望どうりにならない方が多い中、こうやって元気なうちに家族の同意を得ておくことは、実に大事なことです。
介護をしている間は、気が付かないうちに気が張っているのでしょうね。その後に具合が悪くなる方が多いのです。介護していた人が亡くなって、後に残された人がどう生きていくのか、そんなヒントもこの本の中にありました。
1596冊目(今年134冊目)
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