『生きることの豊かさを見つけるための哲学』 齋藤孝
現代人は「頭でっかち」の状態
今わたしたちが生きている世界には情報が溢れかえっています。何か知らない事や言葉にぶつかったとき、かつてなら辞書を引くとか、詳しい人に聞くという選択肢しかなかったのに、今はネットで調べると答える人が多いのではないでしょうか。それは確かに便利です。でも、答えだけ知って満足してしまっているということはないでしょうか?新しい知識を得て、そこからさらに展開するとか、実物を見に行くとかという実体験が伴なうことは、どれだけあるのでしょうか?
逆に、情報を知ったらすぐに見に行きたいと思う人が多過ぎて、困ってしまっている場所もあります。流行りものを追っかけることにばかり気持ちが持っていかれて、現地の人に迷惑を掛けていないか?とか、そこまでして見に行く必要があるものか?というような考えがない人が余りにも増えているような気がします。
情報化社会が「初めて」の体験を奪う
何かを知って、それを体験してみるということで一つの経験が生まれるのですが、知っただけで満足してしまう人も増えています。体験なしの知識は所詮それだけのもの、決して身につくものではありません。
誰も身体の使い方を教えてくれないという不満
座る、立つ、歩くといった基本的な動作から、箸の使い方、洗濯ものの干し方、ノートの取り方、お風呂の入り方、そんな日常的なことすべてにおいて、誰にも教わっていないことがとても多いのです。自己流で不自由がないからと、適当にやっていると、ある日突然不都合が起きる事があるのです。
たとえばお風呂の入り方などは顕著な例です。みんなが銭湯に通っていたころは、他人の動作を見て真似をしたり、ルールを教えてもらったりということが普通でした。でも今はどの家にも風呂があるから、大きなお風呂での身体の使い方が分からないのです。そして、温泉や旅館の大浴場でとんでもないことが起きてしまうのです。
身体的経験を通して豊かさを発見する
悩んでしまってにっちもさっちもいかなくなった時、同じことばかりの連続に飽きてしまった時、ちょっと散歩に出るだけでも気分は格段に良くなります。風に吹かれたり、鳥の声を聞いたり、すれ違う可愛い犬に心を奪われたり、そんな小さな経験が心を豊かにしてくれます。それまでの仏頂面も思わず緩みます。
青果店で野菜や果物を眺めたり、ウィンドウショッピングをしたり、公園の大きな木の下でお弁当を食べたり、カフェでお茶したり。いろんな刺激を受けることで、心がなごんできます。
職業も身体感覚で選ぶ
今多くの若者が職業を理屈で選んでしまっています。有名な会社だから、親に勧められたから、給料がいいから、それって結局は誰かが言っていることを鵜呑みにしているだけですよね。自分はこういう仕事をしたいという目標がはっきりしていないから、そういう理屈だけで仕事を選んでしまっているのではありませんか?
自分は人と話をするのが好きだから営業をやりたいとか、黙ってコツコツと仕事をしたいから経理がいいとか、手先が器用だから職人的な仕事をしたいとか、自分の特徴と相談して仕事を探すのが本来のはずなんですけどね。どうもそういうことを無視して万人向けの情報ばかり取り入れてしまっているのは残念です。
とにかく実践してみること。何だろうと思ったらやってみること。それが人間としての幸せを生み出してくれると信じています。
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