『ひりつく夜の音』小野寺史宜
クラリネット奏者の下田保幸はデキシーランド・ジャズのプレイヤーですが、グループのリーダーが亡くなり、自動的にグループの活動もなくなり、今は音楽教室の講師として細々と生活をしている状態でした。
ある日、警察からあなたの知り合いの青年が拘置所にいるので、彼の身元引受人として来てくれという電話がかかってきたのです。しょうがないので行ってみると、昔付き合っていた女性の息子で今はギタリストとして活動している音矢がそこにいたのです。
好きで始めたことで生きていけると、若い頃はそれだけで幸せですけど、歳をとってくるとそれだけでは生きていけない現実に直面してしまうのは、保幸さんのようなミュージシャンだけでなく、画家やスポーツマンや、もしかして普通のサラリーマンだって同じなのかもしれません。
細々と生きていくということを覚悟して、でもこんな生活をしていられるのもいつまでなのかなぁって、心に不安を抱えながら生きている保幸さん。週に2回教えているクラリネット教室の生徒の1人が、やる気があるのかどうか良く分からないところにクスっと笑ってしまいました。いい楽器を持てば上手く演奏できるって思ってる人が世の中にはたくさんいるのねぇ。先生もタイヘンよ(汗)
わたしは高校のときにブラバンでクラリネットを吹いていたので、ある程度になるまでは練習しかないってことが身に染みています。いくら良い楽器でも、それをちゃんと演奏できる技術がなければいい音は出ませんからねぇ。
保幸さんは音矢くんとの出会いで、何かを見つけたみたいですね。それも運命なのかな?人生は意外な所から開けていくんですよね、きっと!
この本は 書評サイト 「本が好き!」 より献本して頂きました。どうもありがとうございました。
1639冊目(今年177冊目)
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