『トランスジェンダーの私がボクサーになるまで』 トーマス・ページ・マクビー
トーマスは女性として生まれたけれど、子供の頃から自分が女であることが不自然に感じていました。ずっとショートカットで化粧もせず、パンツをはいていて、周りの人たちから「男か女か分からない」と言われることもありました。
色々と悩んだ末にトーマスは30歳の時に決断をしたのです。テストステロンを注射して男の身体を手に入れるのだと!
乳房を切除し、テストステロンを摂取することでドンドン男の身体になっていきました。ひげも生え、見た目は完全に男となったのですが、最後に残ったのが心の問題でした。「男とは、どう生きなければならないのか?」その答えが見つかるかもしれないと思い、ボクシングを始めたのです。
トーマスはずっと男になりたいと思っていました。でも、男として育ってきたわけではないので、どうしていいのか分からないことが沢山あるのです。たとえば「男とは弱音を吐かないものだ」「男はケンカを売られたら逃げてはいけない」などの「男らしさ」と、どう対峙したらよいのか分からないのです。
ボクシングのトレーニングを行うようになって「怖い」という感情とも戦わなければならなくなりました。「男なんだから怖がっていると相手に悟られてはいけない」という思いに捕らわれてしまうのです。でも、怖いものは怖いのです。
トレーニングを重ねていくうちに、いろんなことに気付けいてきます。自分が怖いと思うように、相手だって怖いのだということや、他人からのアドバイスはありがたいものだとか、毎日トレーニングすることによって身体ができてくるに連れて自信も生まれてくるのだと。
トランスジェンダーの人が持つ悩みは本当にいろいろあるのですね。かつて女だったから分かることもあれば、かつて女だったからこそ分からないこと。男とはという幻想が自分を苦しめてしまうということ。
そういう悩みを1人で抱えていたら、本当に苦しいでしょうね。トーマスには愛する人がいて、その人がちゃんと見守っていてくれるのだから、幸せなんだよねって思いました。
一口にトランスジェンダーと言ってしまいますけど、それぞれにいろんな悩みを持って生きているのです。彼らが自由に発言できて、それを素直に認める人が増えれば世界はもっと楽しくなるんだよって思います。
トーマスの未来が明るいことを信じたいです。
#トランスジェンダーの私がボクサーになるまで #NetGalleyJP
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