『人生、成り行き -談志一代記-』 立川談志
談志師匠へ吉川潮さんがインタビューするという形式で書かれた本です。談志師匠は小学生の時から読書が好きで、落語が好きで、将来は落語家になるのだと当時から考えていたそうです。
談志師匠が弟子入りしたのは5代目柳家小さん師匠の所です。結局は一門を離れることになった談志師匠ですが、小さん師匠は自分の弟子の中で一番うまいのは談志だと言っているくらい認めています。でも、談志師匠は普通の人じゃありませんから、本人の前で「噺が下手だ」とか言っちゃうんですよね。でも、そういうストレートな性格をちゃんと理解してもらえていたようです。
立川流を起こして、そこには弟子が大勢いますが、落語協会に属していないため、普通の高座に上がることはできません。でも、それが結局は良かったんじゃないか?と談志師匠は言っています。今までの慣習に縛られなかったからこそ、家の一門には優秀な噺家が揃っているんだと豪語しているのです。
特に志の輔さんに関してはべた褒めです。「あいつは上手い」と本人の前で言っちゃってますから!よその雑魚と一緒に6人会なんてやってんじゃないよなんて、6人会の舞台で言っちゃったりしてるのも、その愛ゆえでしょうか?そのセリフの後に、志の輔さんが「雑魚でございます」と言って登場したという話からも、師弟愛を感じちゃいます。
志の輔さんはできるだけ談志師匠に似ないように努力しているのだそうです。そういうところがエライんだよ、いい了見だ!って師匠は思ってるんでしょうね。
談志師匠の信念としてあるのが、私生活と噺家談志が一体化しているということだったというのは、新しい発見でした。噺というのは生身の人間がやっているんだから、その人となりが出てしまうものなんだ、ウソを言ったらバレちまう。本当にそうなんだと信じて噺をするには、狂気が必要なんだよ。そのために身を亡ぼすのもしょうがないんだ。みたいなことを考えていたようです。そういう観点から行くと、弟子の中で一番談志師匠に近い感性なのは志らくなのかもしれません。
それにしても、談志師匠の記憶力は異常です。さんざ遊び惚けているようでいて、落語に対しては常に前向き、凄い噺家だったんだなと改めて感心しました。
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