『8050問題の深層』 川北稔
2019年5月28日、登戸駅近くでスクールバスを待つ小学生と児童を見送りに来ていた父親が刺され、18人が負傷し2人が死亡する事件が起きました。その4日後、練馬区に住む70代の父親が40代のひきこもり傾向のある息子を刺殺するという事件がありました。この父親は、自分の息子が登戸での事件と同様の事件を起こすのではないかという危惧を抱き、犯行に及んだと供述したそうです。
これは、とてもショッキングな事件でした。ひきこもっている子供が若いうちは、そのうちに状況は良くなっていくだろうと楽観的に考えられもしましたが、子供が中年となり、一生このままかもしれないという思いに恐怖を抱く両親が増えてきたのです。両親が80代子供が50代を迎える頃になると、親が他界した後、子供の生活はどうなるのだろうかという不安を抱く人は更に多くなっているのです。
実際に子供だけが残されてしまったケースもたくさんあります。親が死んでもそれを外の世界へ伝えることができずにいて、何かのきっかけでそれが判明して刑事事件になってしまったり、自分だけでは生きていけず結局子供も死んでしまったりということもあるのです。
なぜそんなにも長期間「ひきこもり」が続いてしまうのか?その原因は様々ですが、一番大きな原因が「他人に迷惑をかけられない」という心理にあるようなのです。こんなに何もできないいい歳をした自分の子供がいて、誰かのお世話になるわけにはいかないという意識が、誰にも相談できない、誰にも助けてもらえないという限界家族を作ってしまう原因であることが多いようなのです。
親の介護のことだって、誰に相談していいのか分からないという話はよく聞きますが、ひきこもりの中年成人のことを、誰に相談していいのか分からない人はもっともっと多いのでしょう。
近所の人や役所などに相談すれば、きっと何か助けになることがあるはずなのですが、どうも最初の一歩が踏み出せないことが多いのです。
日本の福祉は基本が「申請ベース」であるということも、こういう苦しみを生み出す原因の一つでもあるのです。何かアクションを起こさないと誰も助けてくれない社会。そして助けを求めることを良しとしない心理。いつから日本って、そんなに冷たい国になってしまったのかしら?
ひきこもりの原因は様々です。学習障害や精神障害があって学校でいじめられたことが原因だったり、社会人になってからストレスで心に傷を負ったり、病気やケガが原因だったり。いずれにせよ、外の世界へ出ていくにはとても勇気がいるのです。そこをちゃんとケアしてくれる人がいれば、ほとんどの場合外に出られるのです。
もちろん時間はかかります。意外な所に心のブレーキが潜んでいます。あきらめないこと、あせらないこと、そして様々な制度や学習場所があることを多くの人に知って欲しいなと思いました。
これは決して他人事ではないのです。あなたにもわたしにも、いつ起きるか分からない問題なのですから。
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