『自閉症の僕が跳びはねる理由』 東田直樹
自閉症という言葉は知っているけれど、それがどんなものであるのか全く知りませんでした。そういう人がいるという事は知っていましたけど、その人がどんなことを感じたり考えたりしているのかも、全く知りませんでした。ですから、この本を読んで目からウロコだらけでした。
自閉症の症状である「言葉の遅れ」「言葉の指示が理解できない」「感情のコントロールができない」「じっと出来ない(多動性)」「感覚の過敏性」などが、当事者の言葉で説明されると、「ああ、そういうことだったのか」と思えることばかりなのです。
東田さんは会話はできませんが、パソコンや文字盤ポインティングでのコミュニケーションがとれます。その能力を生かしてこの本を13歳の時に書かれました。
自分の意志を言葉で伝えることが困難なために、知恵遅れであるような誤解を受けることが多かった自閉症の人たちの真の能力をこの本は伝えてくれています。
人によって症状は様々で、その行動がなかなか理解されてこなかった自閉症というものを、とても具体的に説明してくれている中で、特に印象的だったのは「目から入る情報に対する意識」です。
何かをやっている時にふと目に入った情報に興味を持ち、突然そちらへ行ってしまって元の場所へ帰ってこられなくなる。つまり迷子になってしまうのです。ですから、目から入る情報を極力減らすことで集中力を増すことができるという話などは、自閉症でなくとも同じだなぁと思うのです。
数字が大好きだとか、こだわりが強いとか、東田さんの言葉を読んでいると、そういう特性のある人なんだなぁと自然に感じられるのです。
この本は英語に訳されたことがきっかけになって、30か国語(2016年現在)に翻訳されています。それほど、自閉症について知りたいと思っていた人が沢山いたということなのですね。
自閉症であっても生きていきやすい社会が広がるためには、多くの人の理解が大事だと思います。そのためにも、この本をより多くの人に読んでもらいたいと思います。そして、真実を知って欲しいと思います。
1659冊目(今年197冊目)
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