『七十歳死亡法案、可決』 垣谷美雨
政府は日本国籍を有する七十歳以上の国民は誕生日から30日以内に死ななければならない」という七十歳死亡法案を可決したのだ。(内容紹介より)
この法律が後2年で施行されようとしている中、宝田家の主婦で55歳の東洋子さんは義母の介護に追われていました。寝たきりの義母は夜中でもベルを鳴らして自分を呼ぶし、夫は仕事が忙しいと言って家に帰ってくるのが遅いし、息子は就職先で上手くいかなくなって引きこもりになってしまったし、娘は家を出てしまったし。結局はワンオペ介護でクタクタの毎日、「七十歳死亡法案」が実施される2年後には、自分は解放されるという希望だけを頼りに生きていたのです。
とはいえ、70歳まで自分に残された時間は15年しかないのに、後2年は自由がないという現実から逃れたい。でも、どうしていいのか分からないのです。
世間では、国の財政状態を考えたらこの法案は実に現実的であるから賛成だという意見と、どんな人にだって生きる権利はあるという反対意見が闘われているのです。
介護が長期化する今、それを誰が担っていくのか?介護施設と自宅介護の使い分け。一部の豊かなお年寄りと、未来が見えない若者たち。この本の中で描かれているのは、厳しい現実社会です。このままでは日本の財政が破綻するのは間違いありません。でも、国だけに問題があるというわけでもありません。
結末はかなり良い場所に落ち着いた感じですけど、現実はこうはいかないなぁって思いました。そして、ここで描かれているのは極端な考え方ではありますけど、一度みんなで考えてみた方がいいことなのだと思いました。
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