『ふるさとって呼んでもいいですか』 ナディ
ナディさんの家族は1991年1月にイランから日本へやって来ました。両親と長女のナディさん6歳、長男5歳、次男1歳。当時、イランから出稼ぎ労働者として来日する人は大勢いましたが、そのほとんどが男性で、家族と一緒に来た人はほとんどいなかったそうです。
近所にイランから来た人たちが大勢いたので、とりえあえずの生活はできるようになりましたけど、言葉が分からない、日本の習慣が分からない、食べ物を買いに行っても良く分からない。とにかく分からないづくしのところから日本での生活が始まりました。
どうしてイランから大勢の人が日本にやって来たのか?どうして男性ばかりだったのか?学校へはどのようにして行けるようになったのか?などなど、この本から初めて知ることがたくさんありました。
いろいろな問題がありましたが、ナディさんの家族は日本で暮らし続けることができるようになりました。でも6歳で日本にやって来たナディさんは2つの国の間で宙ぶらりんになってしまっている自分に気がついてしまったのです。
国籍も見た目もイラン人だけれど、頭の中は日本人なのです。食べるものも着るものも日本人なのです。でも、知らない人からは外人と呼ばれてしまいます。こういう感覚を持ってしまった人はナディさん以外にも、きっと大勢いるのでしょうね。
今ナディさんは結婚して子供もいて日本で暮らしています。そして、彼女は「わたしはイラン系日本人だ!」と思っているのだそうです。そうだね、ナディさんは日本人だよって、わたしも思います。
移民とは別に、日系三世までであれば日本での在留資格が得られます。この資格で日本に20年以上住んでいる人を知っているのですが、彼らもいつも悩み続けています。仕事をする場としての日本は良い国だけれど、いずれは母国へ戻りたい。でも、母国では仕事がない。だから日本で働き続けるという人もいます。
どこで生まれたかで決められてしまう国籍と、「意識としての自分の国」の狭間で悩む人が大勢いるのだということを、忘れてはいけないと思います。
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以下、追記
どこで生まれたかで決められてしまう国籍」では、間違っているのではないかというご指摘を頂きました。
そこで、日本国籍の自動取得について調べてみました。
「出生・準正による取得」
国籍法では次の3つを出生による日本国籍取得の条件とし、これらの事例では自動取得となる。この他、「準正」による取得は届出により取得できるとしている。
・出生の時に父又は母が日本国民
・出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民
・日本で生まれ、父母がともに不明のとき又は国籍を有しないとき
ということなので、日本で生まれただけでは日本国籍は取得できないのです。あくまでも父母のどちらかが日本人であることが条件なのです。
日本国籍って日本人にこだわっているんだなぁということが良く分かりました。
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