『数学する身体』 森田真生
ものの数を数えるというところから発生した数学。計算方法を生み出し、計算する道具を作り出し、その行きつくところは何処なのでしょう?
何気なく手に取ってしまったこの本ですが、難解だなぁと思う内容でした。でも、アラン・チューリングが登場したところで急に面白くなってしまったのです。数学を愛したチューリングですが、彼が一番愛したのはクリストファー・モーコムという科学少年であり、彼が若くして亡くなった後「心」と「機械」を結び付けることに心血を注いだというのです。
その結果チューリングが作った暗号解読機によってナチスドイツの暗号(エニグマ)は読み解かれ、連合軍は勝利したのです。なのに、彼の思想の根底にある「男性を愛する」ということによって、彼は捕らえられてしまったのです。そして薬物による治療という処置を受けることとなり、その苦痛のあまり自殺してしまったチューリング。戦争を終わらせるために力を尽くしたのに、こんなにもひどい仕打ちをするなんて、当時の英国はひどい国です。
この本の中には、わたしの大好きな人がもう一人登場します。その人はラマチャンドラン博士(脳学者)です。「獲得性過共感」つまり、自分以外の誰かが痛い目にあっているのを見ているだけで、自分にも痛いという気持ちが伝わってくるという現象や、すでに無くなってしまっている腕や足の痛みを感じる「幻肢」などについて研究されている方です。
「獲得性過共感」や「幻肢」が数学と結びつくのだという考え方を初めて知りました。数学って私が知っている世界よりもっと広い世界のものだったのですね。この本を読んでみて良かったなと思いました。
1696冊目(今年1冊目)
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