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『声のサイエンス』 山崎広子

声のサイエンス

山崎広子

ヨーロッパの声の美意識は「低く深く響く」ことにあり、中東では「甲高く情熱的」であることにあります。その中で、日本人の伝統的な美意識はというと、面白いことに「雑音」にあるのです。(本文より)

 昭和を代表する首相、田中角栄氏のだみ声は印象的でした。そして、その声に魅了された人が大勢いたのです。西洋的な澄んだ声よりも、雑音が混ざった声に説得力を感じる日本人の心に深く訴えかける声だったのです。ただし、こういう音色を好むのは昔の人たちで、現代の人たちは西洋的な澄んだ声を好むようになってきているのだそうです。

 わたし自身、澄んだ声よりもハスキーな声が好きなので、古いタイプの日本人なのかもしれませんが、サッチモやロッド・スチュアート、憂歌団の木村さんのような声はやっぱりいいなぁって思います。

 ボサノバの場合は風が含まれているような声だし、シャンソンはしゃがれ声、レゲエはベタっとしたダミ声、デスメタルのデス声が好きな人も結構いますから、雑音を含んだ声というのも、ある種の美声なのでしょうね。

日本人女性の声は異常に高い

 これは、いつも感じていることです。身体が小さい人は声が高いというのはしょうがないのですが、同じような体格のアジアの人たちと比べて日本女性の声のキーがとても高く、大人になっても子供のような声を出している人がとても多いのです。

 この本の中で、これは社会体制の問題じゃないかと分析されています。男性優位社会の中では、高い声を出して自分は弱い立場なのだと主張することによって生きやすくなるから、女性の声が高いのではないかと。いつまでたっても男女格差が縮まらない日本だからこうなっているというのが悲しいです。

人前で話すことの苦手意識と自己への無能感は比例する。
日本人は世界でも突出して自分の声が嫌いなうえに、人前で話すことが苦手です。

 自分の声を意識して聞くこと、自分の声の出し方を分析してみること、そういうことをする人は日本には余りいません。ちゃんとチェックすればいい声、自分らしい声が出るようになります。そういう努力をすれば、自分の声に自信が持て、人前で話すのが苦ではなくなると著者は言っています。

 こういうところから自分自身を見直すって大事なんですね。

 声というものをテーマにして、こんなにもいろいろなことが分かるのかと驚くことばかりの本でした。

1725冊目(今年30冊目)

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