「dele(ディーリー)」 本多孝好
祐太郎くんは、前よりはマシな勤め先として『dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)』という事務所で働くことになりました。そこには坂上圭司という所長がいて、「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除(delete)する。」という仕事をしているというのです。
パソコンやスマホが一定の時間アクセスをしなくなった時点で契約を開始するのですが、契約者が本当に死んだのかどうかを確認しに行くのが祐太郎くんの仕事です。
遺族に見せたくないデータにはいろいろなものがあります。お金の情報、写真、名簿など、犯罪に関わるものもあれば、個人のプライバシーに関わるものもあって、所長の圭司は中身を確認することなく削除していきます。それが契約だから、誰にも分からないようにデータを削除するのが大事なんだと主張します。
祐太郎は死亡確認のために、実際に家族や友人などに会いに行って様々な話をしてきます。その中で、ちょっと引っかかることがあるのです。データを削除するのを待ってくれないかと圭司に頼むことがあったのです。
これからの時代、こういう仕事は生まれてくるのでしょうね。パソコンやスマホだけでなく、SNS、クラウドなど、様々な所に故人のデータが残ってしまうのです。それが残された人にどんな影響を残すのか?自分が元気なうちに考えておかなければならないことがたくさんあるのです。
たとえ自分が死ななくても、こういうものを自分で扱えなくなってしまうこともあるかもしれません。そういうことを考えさせてくれる実にいい作品だと思いました。
祐太郎と圭司の関係も段々と変わってきて、次作にも期待してしまいました。
この5編が収められています。
- ファースト・ハグ
- シークレット・ガーデン
- ストーカー・ブルース
- ドールズ・ドリーム
- ロスト・メモリーズ
1753冊目(今年58冊目)
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