『兄の名は、ジェシカ』 ジョン・ボイン
ジェイソンはサッカーが上手くて、クラスの人気者で、僕の自慢の兄さん。ある日、その兄さんが両親と僕(サム)の前で告白したんだ。自分はずっと男であることに違和感を感じていて苦しんできた、これからは女性として生きていきていきたいと。
両親は、単なる思春期のたわごとだと思い、彼の話を真剣に聞いてくれない。弟の僕は優しい兄さんが苦しんでいるのを見るのは嫌だけど、兄さんが兄さんでなくなってしまうのは嫌だ!と思っている。家族4人でカウンセラーの所で話をしても、両親も兄のジェイソンも自分の主張をするだけで、何の進展もない。ジェイソン兄さんは、そんな家族と一緒にいたくないと言い、ローズおばさんの家へ行ってしまった。
こういう話って、分かりたくない人にとってはとてつもなく分からない話なんだろうなぁって思います。友だちのことだったら冷静に話ができても自分の家族のこととなると、徹底的に「そんなはずはない!」「治らないのか!」と否定してしまう人が多いのだろうなぁと思います。
本当に辛くて悩んでいるのは本人なのに、「親の気持ちも知らないで」とか「世間体が悪い」なんて理由で話を聞いてもらえないのは、本当に切ないですね。
ジェイソンにはローズおばさんという理解者が現れたから、次のステップへ進めたけど、そういう人が現れなかったら、ノイローゼになってしまったり、最悪の場合死んでしまう人もいるのです。
サムは、最終的に「兄さんの名は、ジェシカだ」と言えるようになったけど、そこに至るまで随分悩んだんですよね。家族も、友達も、みんなでそれぞれの違いを理解しあえるようになるには時間がかかります。
LGBTやトランスジェンダーの問題だけでなく、人はそれぞれに違っているのです。いろんな考え方があり、いろんな感じ方があり、いろんな生き方があるのです。それをお互いに尊重しあいたいと思います。それこそが「愛」なのですから。
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