『地獄変』 芥川龍之介
高名な絵師である良秀は、お殿様から地獄変の屏風を描くことを命じられます。
良秀は想像で絵を描くことができない人なので、常に実物をスケッチしながら絵を作っていきます。そのために弟子を縛ってモデルにしたり、別の弟子はミミズクに襲われたり、自分がどれだけ酷いことをしているのかなど、ちっとも気にしない人なのです。でも、彼が描く作品は素晴らしいのです。
屏風をほとんど書き上げたのだけど、一部分どうしても実物を見ながらでないと書けない部分があると、良秀はお殿様にお願いをしたのです。それはそれは酷いことを。
自分が望むことのためには手段を選ばなかった良秀は、結局一番大事なものを失ってしまい、自害してしまいます。
こういう結末になったということは、良秀にはまだ人の心があったということなのでしょうか?良秀の望みを叶えてやったお殿様は悪魔だったのか?
人の業というのは恐ろしいものだと思うのです。
このごろ、自分だけ良ければと思って行動している心ない人たちのことが、ニュースで良く取り上げられています。やってしまったことの大きさに驚き、そこで初めて自分の愚かさを知る人もいれば、自分がやったことを肯定することしか考えていない人もいます。
おのれの愚かさを感じることがない人とは、ばけものか何かなのでしょうか?そんなばけものに殺されてしまうのは、まっぴらごめんです。
1805冊目(今年110冊目)
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