『「山奥ニート」やってます』 石井あらた
大学に進学するが、ひきこもりとなり中退。ネットを通じて知り合ったニート仲間に誘われ、2014年から和歌山の山奥に移住。以来、駅から車で100分の限界集落に暮らしている。月の生活費は1万8000円。収入源は紀州梅の収穫や草刈りのお駄賃、ブログの広告収入など。「なるべく働かず、面倒くさい人間関係から離れて生きていく」を実現したニートが綴る5年間の記録。(内容紹介より)
現在は15人で共同生活をしているのだけれど、それぞれ自由に時間を使っています。一緒に何かをするのも、自分の部屋に籠るのも自由。彼らにとって最低限必要な固定費(食費、光熱費、通信費、その他すべて)は18,000円だけだから、アルバイトをしても貯金を使ってもそれは自由。
山奥ではルールが曖昧な分、みんながある意味、遠慮している。この広い家に、無料で住めることを全員が多かれ少なかれ感謝しているんだと思う。
5年の間には入ってきた人も出ていった人もいるけれど、その理由もとても自由です。お金が払えないから、嫌な人がいるから、大勢で暮らすのがイヤだからなどなど。最初は2人で始めたこのシステムを気に入ってくれて、ここが良くて済み続けている人がここまで増えたというのは、やはり自由があるからなのだと思います。
仕事に追われて、病院に行く暇すらない生活をしているより、お金はなくとも時間がたくさんあってのんびりしてるニートのほうが絶対に健康的だと思う。
町で暮らす時にどうしても避けられないのが家賃という大きな出費です。ここでは家賃がないということが、いかに金銭的に楽なのかということが良く分かります。わたしたちは家賃やローンや交通費やつまらない交際費に、多大なお金を使っているんだなということが良く分かります。そのために働くことを辞められなくて、結局身体や心を痛めてしまう人がホントに多いのですもの。
よく「働くのが嫌」って聞くけど、本当に労働自体が嫌なのか、それとも人間と触れ合るのに嫌気がさしたのか、どっちなんでしょうね。ただ働くだけなら大丈夫なのに、気持ち悪い人間関係が一緒についてくるから嫌っているひとが多いんじゃないかと思います。
「働かざるもの食うべからず」的な発想を持った人が世の中の大多数なんだけど、それだけが真実なのか?ということを、この本の中で何度も感じました。限界集落に昔から住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんたちの話に耳を傾け、お手伝いを頼まれれば草むしりをしたり、重いものを運んだり、そういう付き合いって、単なる労働とは別のものですよね。
そうやって仲良くなると、帰りに野菜をもってけとか、パン食べるかなんて優しくしてもらえる。そして一食助かる(笑) こんな相互扶助の関係こそが本当の人間関係のはずだったよなぁって思います。お金とか時間とか効率とかばっかり考えていたら、こういうことはできなくなっちゃう。
村おこしの起業家がやってきて、「ニートの人たちが過疎を救う」みたいな企画を立てて、一生懸命働けば稼げますよって提案してきたときに、「働けるのは1週間に1日くらいです」という返事をして、起業家が黙っちゃったというところには笑いました。そこなんですよ、「一生懸命に働いて稼ごう」という発想が通用しない人がいるということが分からないんだな!そういう考え方がニートを生んじゃうんだなってことなんです。
子どもの僕の中には、ひとつの定理が出来上がっていた。ものをもらうと、代わりに自由が奪われる。
著者のこの言葉にドキッとしまいた。わたしの子ども時代と同じじゃないですか!わたしもそう思っていたんです。だから、やたらと物を欲しがらない子でした。「自分の欲しいものは自分で稼いで手に入れるんだ」とずっと思っていました。わたしはそう思い続けて、とりあえず破綻せずに今日まで生きてきましたけど、その分可愛げのない人になってしまったと思います。
そして、その自分で作った呪縛に縛られたしまった人は引きこもってしまうのかもしれないということが、急に腑に落ちたのです。そう、わたしもそうだったのかもしれないってね。
#山奥ニートやってます #NetGalleyJP
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