『雨かんむり漢字読本』 円満字二郎
天災のときこそ、政治が何をするかが問われる。--そこから、天災が生じるのは政治が乱れているからだという発想が生まれた。なにやら原因と結果が逆になっているような気もするけれど、中国では昔から、そう信じられてきた。(本文より)
「雀」や「集」という漢字に使われている「 隹(ふるとり)」という部首のことを小学生の時に習ったのですが、なぜこれを「ふるとり」と呼ぶのかはずっと知らずにいました。これは「尾の短い鳥」の形を表しているところから付いた名前なのだそうです。旧字体では「雧」という形で、木の上に鳥が三羽(たくさん)集まっていることを表現していたのだそうです。
漢字とはこのように意味があって作られているものだから、略字化されてしまうと元の意味がわかりにくくなってしまうのですね。
鬼の霍乱とは、いつもは丈夫な人(鬼)が急に具合が悪くなる(日射病・熱中症)という表現ですが、ここで使われている「霍」という字は、雨かんむり隹で、にわかに雨が降ってきて鳥が急に飛び立つという意味なのだそうです。つまり「急に、にわかに」というところが強調されているわけです。
雨かんむりに斉の旧字を組み合わせた「霽」は「はれる」と読みます。現在一般的に使われる「晴」は「日が出て青い空」ということですが、「霽」は「雨が済む」つまり雨がやんで晴れるという状態を表す文字なのだそうです。ただ晴れているということではなく、「先ほどまで雨が降っていたが晴れてきた」という天気の変化を示すという、なんだか詩的というか、ストーリーを感じさせる文字なのです。
小学生の時に、宿題で雨という字をノートに書いていたら、母から「雨という字の四つの点が斜めになっていて、雨が降っているみたいな形ね」と言われたことを今でも覚えています。母は子どもの時に四つの点を平行な横棒で書くと教わっていたらしいのです。きっとわたしが習ってきた字を見て、こっちの方が雨らしいわねって思ったのでしょう。
わたしたちに水をもたらしてくれる雨、降らないと困るけど、降り過ぎても困る雨。わたしたちの生活に密着したものだからこそ、雨かんむりの字がたくさん生まれたのでしょうね。
1822冊目(今年127冊目)
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