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『月と六ペンス』 サマセット・モーム

月と六ペンス
The Moon and Sixpence

サマセット・モーム
W. Sumerset Maugham

金原瑞人 訳

英国

 作家である「わたし」は、最初はストリックランド夫人と知り合いになった。彼女はいわば作家たちのパトロンで、自分の家へ作家たちを読んで食事をしたり文学について語ったり、サロンのような場所を提供していたわけだ。夫人にとって夫は無趣味な男という認識だったようなのだけど、ある日突然にストリックランド氏は家を出て行ってしまった。

 夫人に頼まれてストリックランド氏に会ってみると、彼は画家になるために1人になりたかったという。そして、数年後にはパリへ行ってしまった。

 数年後、わたしはパリに移り住むこととなり、ストリックランドと再開するが、彼は絵を描くことだけに情熱を傾けており、人付き合いも悪く、気難しい。でも不思議な魅力があって、わたしは彼と度々会うことになる。

 ストリックランドに優しく接してくれたストルーヴェ、彼も画家なのだが、こちらは底抜けに人がいい。人が好過ぎて、イライラしてしまうほどなのだ。

 ゴーギャンをモデルにしたと言われる画家の話なのだけど、この人物の変人さ加減が並ではない。たぶん今風に言えば、発達障害があって他人の感情に全く興味がない人なのだと思う。極端に人に構われることを嫌い、病気で倒れて看病してもらってもそれに感謝するでもなく、人の妻を横取りしてしまっても自分のせいではないといい、常に人をこき下ろすような言葉ばかり発し、お金があればすべてキャンバスと絵具につぎこんで、絵ばかり描いている。

 周りの人たちに不幸を振りまき、金もなく、とにかく絵が描ければ幸せというストリックランドの態度にムカつきながらも、でも目が離せない「わたし」は、彼の魅力に取りつかれてしまった人だったのでしょう。

 対照的に描かれていた、お人好しのストルーヴェに対する、どちらかと言えば冷たい感情は、これもまた良く分かるなぁと思うのです。

 いい人・悪い人ということではなく、魅力ある人・ない人という尺度で人を判断していた「わたし」にとても共感できてしまいました。

 人生を狂わす名著50 で紹介されていたこの本、実に面白い作品でした。

1813冊目(今年118冊目)

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