『アウア・エイジ(our age)』 岡本学
主人公の男性は、学生時代に名画座の映写室でバイトをしていました。40代になったある日、久し振りに名画座を訪れ、映写室の壁に貼られたままになっていた一枚の写真を見て、心惹かれた女性の記憶が蘇ってきたのです。
その写真には塔が写っていて、手書きで「our age」という文字が書かれていました。ミスミと呼んでいた彼女は幼い頃に母と一緒にこの写真を撮った場所へ行ったのだが、それがどこだかわからないと言っていたのです。
1枚の写真から20代の頃を思い出し、とっつきにくい彼女のことを色々と思い出すうちに、自分は何をしてきたのだろうと思いを巡らせていきます。
神楽坂のたぶんギンレイホールのような名画座の話が何度も登場します。行ったこともない映画館なのに、そのすすけた感じや、客がパラパラとしかいないであろう客席や、フィルムを交換するときの黒い丸が目に浮かんでくるんです。シネコンなんてものがなかったころの、小さな名画座。狭い映写室は、ニューシネマパラダイスと似たような景色を想像してしまいました。
写真に写っていた塔を探す旅は、ちょっと心惹かれました。わたしも、あの塔を探しに電車に乗って旅に行きたいなぁってね。
誰かを探しに行ったのに、そこで自分を見つけてしまったという感じかな?不思議な魅力のある作品でした。
#アウアエイジourage #NetGalleyJP
1850冊目(今年155冊目)
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