『団地のコトリ』 八束澄子
母と二人暮らしの美月さんは、バレーボールに夢中な中学3年生。母に何かがあったらどうしようと不安になることも時々あるけれど、部活も友達関係も上手くいっています。
ある日、家で飼っているインコのピーコが逃げ出してしまい、下の階にひとりで住んでいる柴田のじいちゃんが住む部屋のところまで探しに来てみると、そこにいるはずのない人影を見てしまったのです。
「居所不明児童」、つまり居所がわからなくなってしまっている子どもが全国に大勢いるというのは、今の日本の一つの問題です。親が子どもを育てられないからという理由で施設に預けられている子どもたちがいるということは知られていますけど、子どもと一緒に暮らしたいためにウソをついて子どもを引き取り、失踪してしまう家族がいるというのは、日本という国の影の部分です。
母子(父子)家庭だったり、親がいなかったり、親はいても子どもと一緒に暮らせる状態ではない家庭だったり、いろんな事情を抱えた人が世の中には大勢いるのです。そういう人たちの存在が見えなくなってしまっているのは何故なのでしょうか。
当事者が出てくるのを嫌がっているのかもしれないし、ただ単に助けの求め方を知らないだけかもしれないし、難しい問題はたくさんありますけど、この物語に登場するような子どもを見つけて、何らかの解決策を出さなければならないのは確かです。役所に頼るだけでなく、地域社会として助け合いたいものです。
おかあさんも美月さんも、優しい心を持った人だから、きっとそういう人たちの力になってくれるのでしょうね。
難しいテーマをわかりやすく教えてくれた作品でした。
#団地のコトリ #NetGalleyJP
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