『ただいま、日本』 乙武洋匡
乙武さんが、世界を旅してみようと思い立ち、いつもの車椅子で世界を旅したのです。そして、様々な発見をしました。
混雑を作り出している原因はすべての人にあるにもかかわらず、「我慢」や「自粛」が、ベビーカーや車椅子を利用する少数派にだけ押し付けられてはいないだろうか(p47)
日本は確かに清潔で便利な社会を作り上げました。でも、そのやり方が余りにもシステム側の論理だけでできているんじゃないか?ということに、コロナ禍の今、みんながやっと気づき始めたような気がします。感染防止のために外出自粛とか、電車が混まないように時差通勤しようとか、そういうことを面倒だな、嫌だなと感じつつも、ほとんどの人は我慢して実行しています。
それは、そのうちに元の生活に戻れるさという気持ちがあるから我慢できているような気がするのです。でも、ベビーカーや車椅子や、更にはベッドから動けない人にとっては、これまでも、今も、これからもずっと我慢と自粛生活が続くのは構わないのでしょうか?
それは、おかしいと思います。誰だって同じように行動の自由があっていいはずです。
乙武さんが海外へ行って気づいたのは、道路事情が悪かったり、エレベーターがなかったりしても、車椅子での旅がちゃんと続けられたのは、人々の優しさがあるからだということでした。段差があっても、近くにいる人たちが車椅子を持ち上げてくれたり、この車椅子カッコいいよねと声をかけられたり、この果物おいしいよと口に入れてくれたり、人と人との距離が外国でのほうが近かったのです。
日本でも問題になっているいじめって、私は同質性を重視することから来ていると思うんです。だから、違いのある子供がいじめられてしまう。それで言うとね、ここではいじめって起こりにくいだろうなと思うんです。だって、年齢が違う子どもたちが一緒に学んでいるわけですから、違いなんてあって当たり前なんです。そんなことで誰かをいじめようとする子なんて、誰もいない。(p77 オランダ イエナプラン教育)
同じ年の子どもを集めてみんな同じ方向を向いて先生の話を聞くという日本の学校のスタイルは、わたしたちにとっては当たり前のことだけど、海外ではもっと自由にやってるんだということに乙武さんはビックリしています。日本はあらゆる意味で型にはめるのが大好きなのだということを実感したのです。
他人の迷惑に寛容であろう(p39)
人に迷惑をかけることを極端に怖がる日本人の心の在り方は、どこから生まれたのでしょう?そのためにいじめが起きたり、自殺する子が増えたり、引きこもってしまったり、今のままではダメだということが、もうわかってもいい頃じゃないかしら?
授業中に飲物を飲んだり、床に寝っ転がったりしただけで怒られちゃう日本の学校は変なんだって、みんなにわかってもらいたいな。その子はどうして寝っ転がりたくなるのかの意味を知ることの方が大事なはずなのに、そこに興味を持ってくれない大人ってヤダなって思います。
乙武さんは、マスコミに叩かれて自分の進む方向性を見失っていた時期があり、その時に海外へ飛び出していったのですが、それは大正解だったと思います。自分が知らない世界がたくさんあり、それを自分なりの表現で伝えていくことができそうだと気付いた時、次のステップが始まったのだと思います。
彼は障碍者ではあるけれど、とても自由な人です。やりたいことはやっちゃいます。言いたいことは言っちゃいます。だから評価されることもあれば、叩かれることもよくあります。
彼を叩く人って、どういう気持ちで叩いているのでしょうね。彼の自由さが鼻につくのか?羨ましさの余りムカツクのか?彼のように自由に生きられない自分に腹が立つのか?そういう人たちって悲しい人なんだろうなぁって思えてきます。
自分ができないことを卑下するだけの人生なんて嫌ですから、乙武さんのように自分ができることを探す人生をわたしも歩みたいと強く思いました。
何でもやってみないとわからないものね!
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