『かきあげ家族』 中島たい子
百合子 「昔、天ぷら学生とか、天ぷらナンバーって言ったじゃない?衣かぶってるけど中身はわからないって意味だけど。うちはさしずめ『天ぷら家族』だわね。」
八郎 「むしろ、ぐっちゃぐちゃの『かき揚げ家族』だっ」(本文より)
これは自分に来るだろうと思っていた仕事のオファーが来なくて、八郎さんはすっかり自信を無くしてしまいました。もう、引退かなぁってしょんぼりした気持ちで家へ帰ってきました。
長女(美子)は子どもを連れて出戻り、長男(章雄)は仕事を辞めて出戻り、次男(真太郎)は引きこもり、夫妻と子供三人、久し振りに集まったのです。
映画監督の八郎さん、元女優の百合子さん、自分探しをしたくなった章雄さん、引きこもりの真太郎さん、三男だったけどトランスジェンダーで長女になった美子さん。それぞれに悩みがあって、いままで我慢してきたものをぶつけ合うようになって、八郎さんは家族のことを自分は何も知らなかったということに気付かされてしまいました。
映画監督をしていた八郎さんですから、会話の端々に映画のフレーズが登場します。E.T. のピザの話とか、ゴッドファーザーの家族関係とか、ホントに映画が好きなんだねぇって感心するというか、これじゃ家族や周りの人ももタイヘンだわという感じが伝わってきます。
変な人ばっかりに見えてしまうけど、この家族みんないい人たちですよ。お互いに文句ばっかり言っているけど、自分たちは家族だという自覚はあるもの。
八郎さんは反省します。今まで映画のことばっかり考えて、家族のことをちゃんと見てきてなかったなぁ!それぞれのいいところをみつけなくっちゃ!って思っています。
こういう事態になったとき、よそのお父さんだったらどうするのでしょうね?何だか分からなことだらけでフリーズしちゃうだけかな?
八郎さんは家族のことを、わからないなりに理解しようとするところが偉いなぁって思います。勝手な方向に走っちゃうことも多いけど、でも、誠実な人なんだなって思えます。
家族のことを的確に褒めるって、できそうでできないことなんだけど、八郎さんは果敢にチャレンジしてます。エライぞ、八郎!
#かきあげ家族 #NetGalleyJP
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