『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』 室橋裕和
新大久保って韓流の町でしょって思っている人がほとんどですけど、実はそれはそれは多様な人たちが住んでいるんです。そのきっかけは東日本大震災なのだそうです。それまでは韓国や中国の人が多かったのですが、震災をきっかけに彼らが故国へ戻ってしまって、空いてしまった場所に新しくやって来たのがベトナムやミャンマーなどの東南アジアの人たちなんです。
日本語学校へ留学して、専門学校や大学へ進もうと考える人。親戚や知人を頼って働きに来た人。いろんな動機で日本にやって来て、まずぶち当たる壁が日本語なんです。
住むところを探すにしても、仕事を探すにしても、日本語が分からないとどうしようもない。だから、彼らが困っていることから助けようとする仕事が成立するのです。
部屋を探している外国人に応対し、生活する上での注意点を説明して、家賃保証まで総合的に行っています。(外国人専門の不動産業者)
日本に来てから住む部屋を探すといっても、外国人に部屋を貸すのは嫌だという大家さんは大勢います。部屋を借りる外国人に日本の慣習(ゴミの出し方、部屋では靴を脱ぐことなど)を指導したり、保険や保証の世話をしたりしている業者さんがいます。
こういう会社では、社員も外国人が多く、それぞれの言葉で親身になって世話をしてくれるというのです。そしてその評判が口コミで広がって次のお客さんを呼ぶという循環になっているのだそうです。
行政書士って、世間で思われてるほどには食えない仕事なんですよ。でも外国人に特化したら、もしかしたらいけるかも、と
日本で起業しようと考える人もいます。会社を設立する、飲食店などを開く、そういう時に必ず引っかかるのが役所へ提出する書類です。全部日本語だし、独特の書き方ということもあります。そういう所をフォローしてくれるのが行政書士さん。書類を作るだけでなく、あそこの会社と付き合ってみてはどうかと紹介したり、経営コンサルタント的なことや、町内会のようなコミュニティを広げる手伝いをしていたり、この人たちの力はとても大事です。
「大久保図書館には外国人のスタッフがいる。外国人に親しくしてくれる」と口コミで広がっていく。
長く暮らす人が増えれば子供も増えてきます。様々な言葉の書籍や絵本などを揃えてるだけでなく、いろんな相談に乗ってくれたり、日本語が分からなくて家に閉じこもりがちな人との話し相手になってくれたりもしているのです。
この町にはさまざまな宗教施設がある。日本の寺や神社や教会も、イスラム教徒のモスクも、台湾の廟や韓国の教会も、それぞれのコミュニティが必要に迫られてつくってきた。たぶん食材店やレストランや送金会社と同じように、あるいはそれ以上に暮しには欠かせない、いわば「心のインフラ」なのだと思う。祈りを通じて、時には口実にしてつまり、話し合える場所。社交場。寄合の場なのだ。
宗教施設といっても、訪れる人がどんな宗教なのかはまるで気にしていない施設が多いのにびっくりです。毎月この日はイベントがあるからおいでとか、とてもフレンドリーなのです。食べ物を持ち寄ってお祈りの後にみんなで食事会をしていたり、町のお祭りの時には出店を出したり、この町には宗教戦争なんてありえないのです。そんなことよりも、みんなで助け合おうという気持ちの方が強いのが良くわかります。
アジアを旅するのが大好きで、だったら普段自分が住む場所もアジア的なところがいいなということで新大久保に住むようになった室橋さん。徒歩圏内だけでも様々な国の食べ物が食べられるし、面白い人たちに会えるし新大久保はいい町だなぁって満喫してますね。そして足で集めたこの町の情報はどれもこれも面白い!
元々この町に住んでいた人達にとって、後からやってきた外国の人たちは厄介者に思えたり、怖い人に見えたりしているのも事実です。でもね、それはお互いを知らないからなんだよ。実際に話し合ってみれば、みんな人間、お互いに分かり合えるはずなんだからって頑張っている人が大勢いるんですよ。この町は未来の日本なのかもしれません。
コロナ禍で大変な状況になっても、みんなこの町で頑張ってるから、早く元の状態に戻るといいなぁ!
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