『欲が出ました』 ヨシタケシンスケ
子供が、「あそこさわりたい」と言ったときに、「絶対だめ」って怒ると、いつまでもぎゃーぎゃー泣くけど、一回さわらせると落ち着くことってありますよね。
認知症の介護ヘルパーの仕事でも、やっぱりまず相手の話を全部聞いてあげる。相手がやりたいことをまずやらせてあげる。それから、相手にやってほしいことを提案する、のが大原則だそうです。(本文より)
誰かにものを教えるとき、特に子供や老人、病人など弱者に対するとき、たとえそれが正論であってもその理論を押し付けちゃダメなんだなぁ。本人がこうしたいって思っていることを一回やってみて、それが上手くいかないとか、危ないとか体感してみないと納得しないのよ。一回やった後に、こっちの方が上手くできるよって教えてもらえば素直に聞ける。まずは自分が思った方法でやってみたいという気持ちを尊重しないとね。
そのちょっとしたムダに見える時間がムダじゃないのよ。自分なりに考えてみて、やってみるというところが大事なのよね。それをやらせてもらえないと、一生ヤダヤダ期が続くか、一生指示待ちが続くことになっちゃう。人はみんな自分が正しいって思っているから、それをいきなり否定されるのは屈辱なんだってことを忘れちゃいけないのよね。
肯定欲っていうのが、あるんじゃないかと。
ご時世として、自分を肯定できないならば、せめて誰かを否定していたい。って空気感があるような気がします。自分に何も誇れるものがないようなときに、自分の中の正義からはずれた人をみんなでやっつけようじゃないか、それですっとしようじゃないか、とか。(本文より)
そうなのよ、みんな自分が正しいって思いたい。でも他人はそれを認めてくれない。どうしてなんだろう?自分の正しさを認めてくれないということは、その人たちが間違ってるからなんだ!という理論にすり替わっていくのよ。
世間で有名なあの人がこんなに変なことしてます!みたいなことを言いたくなっちゃう。SNSでバッシングしちゃう。ご近所で悪いうわさ話をしちゃう。それは家庭内でも会社でも、社会でも、いろんなところで起きてます。
でも、振りかざしちゃった正義が間違いだって気がついたとき、ちゃんと「ごめんなさい」って言えてるかしら?
そんなときに「わたし、良くわからなかったから」なんて逃げちゃダメだよね。
ヨシタケさんって、世の中をよく見てるなぁって思います。そんなこと見なかったことにしちゃえば楽なのにってことに、あえて突っ込んでいきます。でも根が優しい人だから、優しくふわっと教えてくれます。クスクスって笑える表現で教えてくれます。
ヨシタケさんの凄さって、そういうところなんだなって、改めて感じる本でした。
1884冊目(今年189冊目)
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