『しゃばけ』 畠中恵
娑婆気(しゃばけ)俗世間における、名誉・利得などのさまざまな欲望にとらわれる心(言泉 より)
廻船問屋の若だんなの一太郎さんは、子供の頃から身体が弱くて外出することは余りありませんでした。自分の部屋で過ごす時間が長くて、さぞかしつまらなかったかと思うと、そんなことはなかったのです。何故かといえば、彼の周りには妖(あやかし)が大勢いて、外の世界の話をしてくれるのです。
そんな彼がどうしても外出したい用事があって、内緒で出かけたらとても怖い目にあってしまったところから物語が始まりました。
前半はけっこうのんびりした感じで進むのですが、町中で殺人事件が連続して起きたあたりから、様子がちょっと変わってきます。
病弱な大店の若だんなってのは、けっこう気疲れしちゃうことが多いんですね。元気だったら店に出て仕事をしてるのが普通なんだけど、そんなことより生きてることの方が大事って言われちゃうのも辛いなぁって感じです。
幼なじみの菓子屋の栄吉にも菓子が上手く作れないという悩みがあって、どこか気があう彼と話をする時にはリラックスできるけど、両親にも手代さんたちにも、本当のことはなかなか言えない、若だんなのぼやきがとっても良くわかります。
後半からは、若だんなにはなぜ妖が見えるのか、その秘密が少しずつ分かってきて、おもり役の手代さんたちがあたふたするところが面白かったです。シリーズ化していったのも良くわかるなぁって思いました。
1899冊目(今年204冊目)
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