『大人の東京散歩』 鈴木伸子
東京には様々な町があります。何か1つキーになるものがあると、同業の人や関連の仕事の人が集まってくるのです。合羽橋道具街があったり、秋葉原電気街があったり、神保町の古書街があったり、上野にバイク屋さんが多かったり。でも、決して昔と同じではないのです。少しずつ変化し続けています。
かつてはおもちゃや花火の問屋が多かった浅草橋は、最近はアクセサリー用の石やパーツを売る店が増えています。秋葉原だって、電気街というよりも同人誌やメイドさんの方が目立ってきたし、池袋も怪しい外国人の町から、女子主導のアニメの町に変貌しつつあります。
四ツ谷駅前には上智大学があり、この一帯にはキリスト教、それもカトリック関連の教会、学校が多い。~中略~ 若葉町方面には、平成19年までラジオの文化放送があったが、ここはもともと聖パウロ修道会によるキリスト教布教のために設立されたラジオ局なのだった。(本文より)
四ツ谷にキリスト教専門の書店があることは知っていましたが、文化放送の由来は知りませんでした。今でも聖パウロ修道会が文化放送の筆頭株主というのにはビックリしました。
江戸時代から続く町、明治以降の外国文化を伝える町、戦後の焼け跡から生まれた町、それぞれの色を持った町が東京には数多く存在しています。この本が書かれたのが約10年前(2009年)です。それから10年の間に平成は終わり、再開発が進み東京はドンドン変わってきました。
昭和は長かったし、勢いのある時代でした。とにかく右肩上がり、ある意味何でもアリな時代だったから、楽しいことがたくさんあったんです。そんな記憶が昭和を懐かしく思わせるのでしょう。平成は少しずつ日本のメッキが剥げてきた時代です。昭和よりレベルアップしたと言いたがっているようなビルが数多く建設され、でも富は一部に集中し、普通の人にとっては厳しい現実が露呈した時代です。
そして令和は、もっともっと現実と理想の乖離が表面化していくのでしょう。コロナ禍を機に閉じる店もあり、東京に大きなオフィスを構えていた会社が規模縮小したり、地方へ移転したり。東京への一極集中が少しでも解消されれば、東京が昔のように住みやすい町に戻れるかもしれません。そんな妄想も込めて、東京を散歩したいなと思います。
1890冊目(今年195冊目)
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