『死神の日曜日』 伊東良
オリオナという町で暮らすナオミには、優しいおばあちゃんがいました。でも、おばあちゃんは今病院にいて、余命僅かなのです。おばあちゃん子のナオミは、彼女を助けたい一心で魔女に会いに行きました。魔女はおばあちゃんを助ける代わりに、ナオミに魔女への忠誠心を求めたのです。
大きな会社の社長さんであるクロス氏は、自分の余命が僅かであることを知り恐れおののいていました。彼もまた、魔女の助けを借りて死から逃れようとしていたのです。
魔女は彼らを助けようとしているわけではありません。彼らを思いどおりに使いたいから、そんなことを言っているのです。そんな魔女に騙されちゃいけないよと、止めに入ったのは死神でした。
死神といっても、彼らは決して怖い存在ではありません。死んだ人たちをちゃんとあの世に送り込むためのツアーコンダクターのような仕事をしているのです。
死神さんは、彼らを助けられるのでしょうか?
魔女は永遠の命を与えてくれると言います。でも永遠の命って、そんなに素晴らしいものなのかしら?
命って限りがあるからこそ大事なものなんじゃないかしら?
自分の寿命はあらかじめ決まっていて、それより早く死ぬと、あの世へ行く手前の場所でずっと時がたつのを待たされたり、もう肉体は死んでいるのに、精神だけが死にたくなくて幽霊になっている人がいたり、生と死って表裏一体なんだなって思うような話も出てきました。
クロス氏のように、自分の仕事ややりたいことのために魔女に騙されてしまう人って、きっと大勢いるのでしょうね。明らかに世の中のためにならないことをやってしまう人たちって魔女の手先なのかもしれません。
永遠に続くことなんて、この世にはないんです。なのに永遠を望んでしまう。人間の欲って果てしないなぁって思いました。
この本は 書評サイト 「本が好き!」 より献本して頂きました。どうもありがとうございました。
1894冊目(今年199冊目)
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