『神さまの貨物』 ジャン・クロード・グランベール
大きな森に貧しい木こりの夫婦が住んでいました。戦争が始まってから夫は強制労働に駆り出され、貧しい暮らしをしていました。おかみさんは、毎日必死に食べ物を探していました。
夫婦の家のそばに線路が通り、貨物列車が走るようになりました。おかみさんは、その列車に向かって祈りました。「わたしたちに子どもを授けてください」と。
そしてある日、列車から何かが落とされたのです。
ただでさえ戦争というのは嫌なことなのに、ナチスドイツの犯した罪は余りにむごいのです。それまでは自国の人だったユダヤの人たちをすべて収容所へと連行しました。収容所で亡くなった人たちも勿論大勢いますが、そこへ運ばれていく貨車の中で大勢の人が亡くなっているのです。
貨車にのせられたユダヤ人夫婦は、自分たちの未来のことを憂い、せめて子供だけでも助かればと賭けに出たのです。
これは物語です。でも、きっと同じようなことがあったはずです。助かった人も助からなかった人も、小さな可能性を信じて生きていたのです。こんなことが二度と起きてはいけないのです。
こんな恐ろしいことを考えてしまった人たちだけでなく、それに疑問を持たずに追随してしまった人たちが多くいたことも忘れてはいけません。権力に盲目的に従う人が多ければ多いほど、世の中は危険な方へ向かってしまうのです。
わたしたちは、忘れてはいけないのです。人間は愚かなことをしてしまうということ。忘れてしまったら、また同じことを繰り返す人がいるということを。
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1913冊目(今年218冊目)
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