『教養として学んでおきたいビートルズ』 里中哲彦
ラジオとレコードが、ビートルズに果たした役割は大きかった。
どうしてかというと、それが「音楽の耳」をつくることに寄与したからだ。(本文より)
ビートルズがデビューした当時、テレビは今ほどの力を持っていませんでした。誰でも持っているというものではなかったし、もし持っていたとしても白黒で、家に1台しかないからどの番組を見るかはほとんど親が決めていました。
ラジオはほとんどの家にありました。町角でも、車でもラジオを聞くことができました。ラジオで音楽を聞くことを楽しんでいる人が大勢いました。流行りの音楽は必ずラジオから耳に入ってきました。
リバプールにいた頃のビートルズのメンバーたちは、もちろんイギリスのラジオ番組を聞いていたのですが、比較的大人しい曲しか流れていなかったようです。海の向こうのオランダの放送局から聞こえてくるアメリカの新しい音楽(プレスリー、チャック・ベリー、リトル・リチャードなど)を一生懸命聞いていたそうです。
地元イギリスの大人が制作しているつまらない番組ではなく、もっと刺激的なものを聞きたいという気持ちは良くわかります。わたし自身、中学生の頃に洋楽の情報はほんとにわずかなものでした。それを補ってくれたのはFEN(Far East Network)でした。ラジオから流れる曲を必死に聞いていました。おかげでビートルズもスティービー・ワンダーもチャカ・カーンもストーンズも、なんでもかんでも聞いていました。それはまさに「Radio Ga Ga」の世界でした。
ビートルズは私を待ち伏せしていた。それまでぼーっと歩いていた私の後頭部をいきなり強打したのだ。忘れもしない12歳の春だった。以来、私はビートルズに殴られっぱなしである。ものごとを損得勘定だけで判断しようとすると、ジョンに「おまえはアホか」といわれて、すぐさま反省する。ビートルズに「あいつ、いかすやつだな」と思われる人間になるのが私の目標である。「ビートルズに殴られなかったらなれなかった人間」になるべく、これからも歩き続けようと思っている。(島村洋子のエッセイより)
こんな風に、ビートルズによって人生が変わってしまった人大勢いるんだろうなと思います。音楽的な影響だけでなく、ファッション的に、哲学的に、宗教的に影響を受けた人が世界中にいるんです。昔なら許されなかったこと、男性が髪の毛を伸ばしたり、女性が長い丈のスカート以外のボトムスを履くようになったり、これまでの常識を打ち破るきっかけを作ってくれたんです。
いうまでもなく、ロックンロールは労働者階級の音楽だ。
クラシックやジャズならいいけど、ロックは下品だと当時は考えられていました。だから、ビートルズがエリザベス女王から勲章をもらった時には、かなりの抵抗があったそうです。でも、今ではサーの称号を頂いたロックミュージシャンは大勢います。ロックは社会を変えてきたんです。その最先端にいたのがビートルズだったんです。
ビートルズが解散してから50年以上経った今、ビートルズの存在を知らない人たちが大勢います。もしかしたらクラシックの音楽家と同じように考えている人もいるかもしれません。だからこそ、こんなタイトルの本が書かれたのでしょうけど(笑)
教養としてビートルズのことを知るのもいいけど、どの曲でもいいですからとりあえず聞いてみてください。いろいろ聞くうちに、あれ、この曲知ってると気付いてくれたらいいなぁ。
わたしにとっては既知のことが多かったけど、社会情勢とか他のミュージシャンのこと(ボブ・ディランとかね)など、そういう比較も面白いなってことがいくつか見つかりました。
その中で一番納得したのは、彼らはリバプールなまりを直さなかった。つまり自分たちのオリジナリティを大事にしていたってこと。ロンドンの人たちが話しているような英語じゃなかったのね。リバプールへ行ったときに、懐かしい響きだなって思ったのは、そのせいだったんだ(笑)
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